Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器2 肝臓 肝線維化の評価法

(S247)

C型肝炎における抗ウイルス療法前後のShear wave elastography測定の意義

Significance of shear wave elastography measurement before and after antiviral therapy in hepatitis C

大川 修, 須田 季晋, 徳富 治彦, 大浦 亮祐, 行徳 芳則, 正岡 梨音, 藤本 洋, 金子 真由子, 玉野 正也

Osamu OKAWA, Toshikuni SUDA, Naohiko TOKUTOMI, Ryosuke OURA, Yoshinori GYOTOKU, Rion MASAOKA, Yo FUJIMOTO, Mayuko KANEKO, Masaya TAMANO

獨協医科大学越谷病院消化器内科

Gastroenterology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【目的】
我々は第89回の本学会シンポジウムにおいて,未治療のC型肝炎患者のShear wave elastography(SWE)は肝の線維化のみではなく肝炎の活動性を反映することを報告した.今回は,C型肝炎患者において抗ウイルス療法前後のSWE測定値がどのように変動するのかを検討することを目的とした.
【対象】
Direct-acting antiviral agents(DAAs)により12週間の経口抗ウイルス療法が施行され,治療前後にSWEを施行し得たC型肝炎119例を対象とした.肝細胞癌の既往,脂肪肝,自己免疫性疾患,心不全を有するものは対象から除外した.治療薬の内訳は,SOF/RBV 49例,SOF/LDV 45例,OBV/PTV/r 25例であった.
【方法】
SWEの測定にはGE Healthcare社のLOGIQ E9を用いた.測定は空腹時に背臥位でBモード観察下に右肋間から行い,測定値はSWの伝搬速度(m/s:以下Vs)で表され,得られた10回の計測値の中央値を検討に用いた.この際,測定成功率80%以下の症例と測定値のばらつきが30%以上の症例は検討から除外した.SWEは治療開始前,治療終了時,治療終了後12週および24週後に測定した.SWE測定同日にALT,AFP,M2BPGiを測定してそれぞれの経時的変化を検討した.
【結果】
HCV RNAの治療前の平均は5.9 LogIU/mlであり,全例がSVR4を達成し,再燃例は認めていない.ただし,抄録作成の時点で治療後12週を評価し得たのは101/119例,同様に24週は70/119例である.治療前,治療終了時,治療後12週および24週のVs値(m/s)は1.57±0.28,1.46±0.26,1.42±0.25,1.39±0.25であり,治療前に比して治療終了時には有意に低下し(p=0.00000),さらに治療終了後から24週後ではさらに有意に低下した(p=0.02544).ASTおよびAFPは治療終了時にはほぼ全例が基準値内に改善し,その後は治療後24週まで有意な変動を認めなかった.M2BPGiの値(C.O.I.)は治療前3.20±3.59,治療終了時1.70±1.64,12週後1.42±1.09,24週後1.25±0.89であり,治療終了時の値は治療前に比して有意に低下し(p=0.00188),治療終了時から24週後までもさらに低下する傾向を認めた(p=0.16914).
【考察】
VsとM2BPGIは一般的に肝の線維化の指標とされるが,治療開始から治療終了までの12週という短期間で組織学的に線維化が改善するとは考えにくく,ASTとAFPが同様に低下していることからも,この期間の両者の低下は肝の炎症改善を反映したものと推測された.一方でVsとM2BPGIは治療終了時から治療終了後12週,24週とさらに低下しており,肝炎の沈静後に線維化が改善されている可能性が示唆された.
【結論】
C型肝炎患者の肝硬度はDAAs治療によって改善することが確認された.これは肝炎の沈静化と肝線維化の改善の双方を反映しているものと推測された.