Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器2 肝臓 肝線維化の評価法

(S246)

C型肝炎のDAA治療による肝硬度の変化‐transient elastographyとVTQの比較‐

Reduction of liver stiffness by direct-acting antivirals for chronic hepatitis C measured with transient elastography and virtual touch quantification

川部 直人

Naoto KAWABE

藤田保健衛生大学肝胆膵内科

Department of Liver, Biliary Tract and Pancreas Diseases, Fujita Health University

キーワード :

【目的】
超音波エラストグラフィにより測定される肝硬度は様々な肝疾患で肝線維化を反映すると報告されており,最近では肝疾患の治療効果を評価する際にも用いられるようになってきた.C型肝炎では直接作用型抗ウイルス剤(DAA)治療により大多数の症例でウイルス排除(SVR)が得られるようになった.本研究では,DAA治療による肝硬度の変化について,transient elastography(TE)とvirtual touch quantification(VTQ)を比較し治療効果の評価における有用性を検討した.
【方法】
当科でDAA治療を行ったC型慢性肝炎・代償性肝硬変345例(男性158例・女性187例,年齢66±11歳)を対象とした.治療内容はGenotype 1型に対するdaclatasvir(DCV)/asunaprevir(ASV)125例,sofosbuvir(SOF)/ledipasvir(LDV)154例,2型に対するSOF/ribavirin(RBV)66例.肝硬度測定はTEによるliver stiffness(LS: kPa)とVTQによるvelocity of shear wave(Vs: m/s)を用いた.
【結果】
SVR率はDCV/ASV 91%,SOF/LDV 98%,SOF/RBV 98%であった.DCV/ASV治療では,治療前(LS 12.7kPa, Vs 1.86m/s)と比較し,治療終了時(EOT)にLSは有意に低下したが(9.9kPa, P<0.01),Vsは有意な低下を認めなかった(1.75m/s, P=0.11).LS,Vsとも治療終了6ヶ月後(9.9kPa, 1.67m/s),12ヶ月後(9.9kPa, 1.75 m/s)には治療前と比較し有意に低下した(全てP<0.01).DCV/ASV治療のnon-SVR例ではLS,Vsとも治療前と比較しEOT,終了6ヶ月後,12ヶ月後で有意な低下を認めなかった.SOF/LDV治療では,LSは治療前(12.1kPa)と比較しEOT(10.0kPa, P=0.029),終了6ヶ月後(7.4kPa, P=0.0017)で有意に低下したが,Vsは治療前(1.74m/s)と比較しEOT(1.57m/s),終了6ヶ月後(1.50m/s)とも有意な低下を認めなかった.SOF/RBV治療でもLSは治療前(11.1kPa)と比較しEOT(10.5kPa, P=0.028),終了6ヶ月後(8.2kPa, P=0.0003)で有意に低下したが,Vsは治療前(1.61m/s)と比較しEOT(1.71m/s),終了6ヶ月後(1.65m/s)とも有意な低下を認めなかった.治療前のLSとVsは,全ての治療においてSVRの予測因子にはならなかった.肝生検を施行した108例のROC解析から求めたVsの肝線維化stageに対するcut-off値(F2: 1.28m/s,F3: 1.44m/s,F4: 1.73m/s)を用い,DCV/ASV治療前後のVs値を推定線維化stageに分類したところ,治療前の推定stage F3-F4の症例のうち,治療により推定stageが2段階以上低下した症例は19%であった.推定stageの2段階以上の低下に有意に関与していたのは,血小板高値(P=0.0055),T-Bil低値(P=0.0130),γグロブリン低値(P=0.0169)であった.
【考察】
C型肝炎のDAA治療によるSVR例では,比較的早期から肝硬度の低下が得られ,線維化と炎症の改善を反映すると考えられた.Vsに比べLSは低下の速度が速く,TEはVTQに比べ炎症の影響を受けやすい可能性が示唆された.VTQによりF3以上と推定される症例の中では,血小板高値,T-Bil低値,γグロブリン低値などにより肝線維化が比較的軽度と考えられる症例において,DAA治療により肝線維化stageの低下が期待できると考えられた.
【結語】
TEとVTQはC型肝炎に対するDAAの治療効果の評価に有用であり,肝線維化の改善をより正確に評価するには長期的なフォローアップが必要と考えられた.