多田 俊史, 熊田 卓, 豊田 秀徳, 金森 明, 小林 奈津子, 片岡 咲, 橋ノ口 信一

Toshifumi TADA, Takashi KUMADA, Hidenori TOYODA, Akira KANAMORI, Natsuko KOBAYASHI, Saki KATAOKA, Shinichi HASHINOKUCHI

¹大垣市民病院消化器内科, ²大垣市民病院診療技術科形態診断室

¹Gastroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital, ²Imaging Diagnosis, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
C型肝炎は直接作用型抗ウイルス薬（DAA）の登場で，高率にウイルス駆除（SVR）が得られるようになった．DAA投与後，ほとんどの症例でALTが正常化し，アルブミンの上昇も認められる．しかし，肝線維化の改善についてはいまだ十分な検討がされていない．一方，超音波Shear Wave Elastography（SWE）による肝硬度測定は肝線維化の診断に有用である．今回，DAA治療前後における血液データおよびSWEの測定結果から，肝線維化の推移につき検討を行った．
【方法】
対象は2014年9月～2016年8月において当院でC型慢性肝疾患（ジェノタイプ1b，NS5A：Wild）に対して，ダクラタスビル・アスナプレビル（DCV・ASV）療法が施行された288例中，（1）24週間の内服終了，（2）内服終了後24週以上の経過観察，（3）SVR24を達成，（4）内服開始時，終了時，および終了24週時にSWEの測定が施行，を満たした210例である．性別（男/女）：96/114例，年齢は71.5（66.0－77.0）歳で，SWE測定はAixplorer（SuperSonic Imagine社製）を使用した．パラメータの推移はFriedman検定（Bonferroniの多重比較）を用いて検討した．連続変数は中央値（四分位範囲）で示した．
【結果】
内服開始時/終了時/SVR24時の順に，（1）AST（IU/L）は44（28－58）/ 25（20－32）/ 23（19－27），ALT（IU/L）は32（21－52）/17（12－26）/ 14（11－18）と経時的に有意な低下が認められた．（2）Alb（g/dl）は4.2（3.9－4.5）/ 4.3（4.0－4.5）/ 4.4（4.2－4.6）と経時的に有意な上昇が認められた．総ビリルビン（mg/dl）は0.6（0.5－0.9）/ 0.7（0.6－1.0）/ 0.7（0.5－0.9）と開始時と比較して終了時およびSVR24時には有意な上昇が認められ，SVR24時は終了時と比較して有意な低下が認められた．（3）血小板（×104/L）は15.3（11.6－19.2）/ 15.6（11.2－19.4）/ 16.0（12.0－20.0）と開始時と終了時では有意な変化は認められなかったが，SVR24時では開始時および終了時と比較して有意な上昇が認められた．（4）AFP（log, ng/mL）は0.63（0.38－0.97）/ 0.42（0.23－0.68）/ 0.40（0.23－0.60）と開始時と比較して終了時は有意な低下が認められたが，終了時とSVR24時には有意差は認められなかった．（5）FIB-4 indexは3.36（2.30－4.84）/ 2.81（2.05－4.30）/ 2.70（2.08－3.88）と経時的に有意な低下が認められた．（6）SWE（kPa）も10.2（7.7－14.7）/ 8.8（7.1－12.1）/ 7.6（6.3－10.3）と経時的に有意な低下が認められた．（7）ALT30以下の症例において，FIB-4 index 2以下の症例ではSWE（kPa）は7.0（6.4－9.2）/ 6.7（6.0－7.3）/ 6.1（5.5－7.5）と開始時と比較して終了時は有意な低下が認められたが，終了時とSVR24時では有意な変化は認められなかった．逆にFIB-4 index 2超の症例ではSWE（kPa）は9.6（7.7－15.2）/ 9.2（7.3－12.1）/ 7.7（6.3－10.1）と経時的に有意な低下が認められた．（8）SVR24時におけるSWEとMR elastograpyの相関（n=62）は相関係数r=0.86（p＜0.001）で強い相関が認められた．
【結論】
SWEの開始時高値は炎症（AST/ALT上昇）が関連していると考えられたが，終了時には多くの症例でAST/ALTは正常化しており，さらにはSVR24時において血小板の有意な上昇も認められたことから，SVRにより少しずつ肝線維化が改善しているものと考えられた．さらにALT低値例のみの検討では，特に肝線維化進行例（FIB-4 index高値例）において，経時的にSWEの有意な低下が認められた．