Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器1 膵臓 慢性膵炎診断における超音波の役割

(S241)

早期慢性膵炎の経過観察における腹部超音波検査の有用性

Usefulness of Transabdominal Ultrasound in the Follow-up of Early-stage Chronic Pancreatitis

石川 卓哉, 廣岡 芳樹, 後藤 秀実

Takuya ISHIKAWA, Yoshiki HIROOKA, Hidemi GOTO

1名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, 2名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部

1Department of Gastroenterology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 2Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

【目的】
慢性膵炎臨床診断基準2009では,早期慢性膵炎(以下,ECP)の診断基準が定義された.しかしその実態については不明な点も多く,長期予後を追跡する必要がある.一方,診断においてはEUS/ERCPが必須とされているが,経過観察例において頻回のEUS/ERCPを施行することは時に困難である.本研究では,ECPの経過観察において,より簡便な経腹壁超音波検査(TUS)の有用性について検討した.
【対象と方法】
2009年10月より2016年12月までの間に当院でTUSおよびEUSを施行し,ECPと診断された症例を対象とした.検討項目は以下の2点である;1)ECP症例の臨床的特徴とEUS/TUSにて指摘された画像所見の特徴と相違点.2)6か月以上の経過観察が可能で,期間中EUS/TUSを2回以上施行した症例について,その画像所見の変化の有無.
【結果と考察】
ECPと診断された症例は24例で,診断時平均年齢60.9歳(34-83),男女比16: 8であった.一日80g以上のアルコール摂取歴を認めたのは11例(45.8%),反復する上腹部発作を認めたのは22例(91.6%)であった.ECPのEUS所見の平均項目数は3項目で最も多く指摘されたのはhyperechoic MPD margin 22例(91.6%),次いでStranding 18例(75%)であった.TUSとの対比ではEUS所見と2項目以上が一致していたのは6/24例(25%)であった.治療としては飲酒歴のある11例では禁酒,6例でカモスタットメシル酸,2例でパンクレリパーゼの投与を行い,8例では無治療で経過観察を行った.ECP 24例中6か月以上の経過観察が可能であったのは22例で観察期間の中央値は1237.5日(IQR 852.5)であった.EUSを2回以上施行したのは9例で,平均施行回数は2.3回であった.9例中,不変が7例でEUS所見の改善を認めたものが2例あった.観察症例22例全例でTUSを2回以上施行しており,平均施行回数は4.5回で,TUS所見において不変が13例,改善が2例で,ECP所見の顕在化を2例,膵実質の高エコー化を3例,主膵管拡張の増悪を2例に認めた.EUS/TUSの所見をあわせると,22例中改善が3例(13.6%),不変が12例(54.5%),新所見の出現が7例(31.8%)であったが慢性膵炎確診/準確診に移行した症例はなかった.TUSにおける膵実質の高エコー化についてその臨床的意義は不明であるが以前にみられなかった所見が出現しており,今後慎重な経過観察が必要である.
【結論】
TUSで診断時にECPの所見を捉えていたのは25%のみであったが,経過観察中,40.9%の症例でTUS所見に変化を認めており,ECPの経過観察においてTUSは有用なモダリティである.