Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器2 消化器横断領域 消化器領域における超音波の最新技術

(S239)

Superb micro-vascular imagingとsmart 3Dを用いた肝表面の観察

Three dimentional image of liver surface vsculature using superb micro-vascular imaging

長沼 裕子, 石田 秀明, 小川 眞広, 大山 葉子, 渡部 多佳子, 船岡 正人, 藤盛 修成, 小松田 智也

Hiroko NAGANUMA, Hideaki ISHIDA, Masahiro OGAWA, Yoko OHYAMA, Takako WATANABE, Masato FUNAOKA, Shusei FUJIMORI, Tomoya KOMATUDA

1市立横手病院消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3日本大学病院消化器肝臓内科, 4秋田厚生医療センター臨床検査科

1Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Hospital, 4Department of Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center

キーワード :

【はじめに】
Superb micro-vascular imagingはframe rateが高く,低流速で微細な血流表示に優れており,従来のカラードプラでは性能の限界でできなかった観察が可能となっっている.一方Smart 3Dは通常のプローブでsweep scanで観察したのちボタン一つで3D構築が可能なソフトで,観察した断面と同じ3D画像が構築できる.これらを用いて肝表面を観察し,若干の知見を得たので報告する.使用装置:東芝社製Aplio 500.中心周波数3.5MHzコンベックスプローブ,7.5MHzリニアプローブを使用した.
【対象と方法】
外来の超音波検査で21例(男性11例女性10例,年齢42-80,平均65歳)にSMIとsmart 3Dで肝表面を観察した.疾患の内訳は正常4例,アルコール性肝硬変(LC)5例,C型LC3例,B型LC1例,自己免疫性LC1例,Budd-Chiari症候群(BCS)1例,遺伝性毛細血管拡張症(HHT)2例,瘢痕肝1例,肝外門脈閉塞症(CTPV)1例,原因不明2例.SMIのROIは4×6cm(コンベックスプローブ),2×3cm(リニアプローブ)を基本とし,流速レンジは0.9-3.2cm/sec,繰り返し周波数は6.3-15.8kHz,フレームレートは45-58フレーム.
【結果】
正常肝では門脈,静脈が規則正しく配列しのびやかに末梢に向かうにつれて細くなっていた.LC例では10例全例で枯れ枝状を呈し,血管の口径も細くなったのち再び太まったりと不整であった.LC例3/10(30%)で門脈静脈シャント(PVshunt)を認めた.BCS例では,肝内の静脈静脈シャント(VVshunt)が肝表面から腹壁につながる様子が確認できた.HHTでは,PV, VV shunt,動脈静脈シャント(AV shunt)が観察された.CTPVでは,PV, VV shuntが観察された.瘢痕肝ではVV shuntが観察された.原因不明の2例ではPV shuntが観察された.Smart 3Dで観察した症例では3D画像を回転させることで,各脈管の位置関係がよりわかりやすくなった.
【考察】
我々は過去の本学会で肝内シャントに関するカラードプラ所見の報告を重ねてきた.しかし問題点として,肝辺縁などの細かいレベルでの観察が装置の性能の限界でできなかった事が挙げられる.SMIでは低流速で微細な血流が高frame rateで観察できることで,いままで知りえなかった血管病変が観察可能になった.LCでは肝表面近傍の口径不整な血管やシャントの存在があることが新たに認識でき,CTPVでも肝門部中心の門脈周囲の側副血行路以外に肝表面に近い部位でもPV, VVshuntが存在した.HHTでは大きなレベルでのシャントに加え,末梢の小さなレベルでもシャントがあることが確認できた.BCSにおいては肝内のシャントに加え,肝表面や腹壁につながるシャントが確認でき,病態の把握に有用であった.これらの所見はいままでみえなかったものであり,このような微細な血管病変が可視化できることにより,今後症例を重ねることで,各症例ごとの詳細な病態の把握が可能になると思われる.