麻生 和信, 岡田 充巧, 玉木 陽穂, 太田 雄, 大竹 晋

Kazunobu ASO, Mituyoshi OKADA, Yosui TAMAKI, Yu OTA, Shin OTAKE

旭川医科大学内科学講座病態代謝内科学分野

Division of Metabolism and Biosystemic Science, Department of Medicine, Asahikawa Medical University

キーワード :

【はじめに】
近年の画像処理技術の向上により，造影3D超音波（造影3D）は高速・高画質へと進化し，肝癌の臨床応用では腫瘍の立体構造を精密かつ客観的に評価することが可能になった．また最近，ドプラのモーションアーチファクトを制御したSuperb Micro-vascular Imaging（SMI）という新技術が実用化され，これに対応する造影3DモードとしてSmart 3Dが開発された．Smart 3Dは，B-modeの組織信号とSMIの血流信号から高精細な3D画像を作成でき，さらに造影剤を用いれば血流信号のみの選択的評価など用途に応じた多彩な画像表示が設定されている．今回我々は，肝癌の精密病態診断における造影Smart 3Dの有用性について報告する．
【対象】
2016年10月31日までに造影Smart 3Dを施行した肝細胞癌30結節．腫瘍径中央値は17.9mm（8.0-99.4mm），腫瘍深度中央値は6.8cm（3.0-11.7cm）であった．B-modeにおけるエコーパターンの比率はMosaic/Hyper/Hypo/NDでそれぞれ43/37/17/3であった．
【方法】
1．画像取得：使用装置はAplio 500．造影SMIはSMI周波数3.6MHz，MI値0.5，フレームレート50/秒に設定し，Sonazoid 0.5ml/body投与にて撮像した．造影SMIにて腫瘍内血流を確認後，腫瘍全体を含むように一定の速度でmanual sweep scanを行い，volume dataを数回取得した．2. 3D画像表示：B-modeの組織像と造影SMIの血流像からvolume rendering像を作成し，血流信号と組織信号の合体表示や血流信号のみの選択的表示の応用について検討した．3．画像評価：造影Smart 3Dによる肝癌の診断は，Ohtoらの報告1）に準じて行った．
【結果】
1．造影Smart 3Dの血流診断能：進行肝癌8結節にて非造影Smart 3Dと造影Smart 3Dで腫瘍内血流の検出率を検討した結果，検出率は非造影SMI 17％，造影SMI 100％であり造影Smart 3Dで有意に高率であった．また，造影MDCT所見を基準に造影Smart 3Dと造影3D従来法の血流診断能を比較した結果，両者に差は認めなかった．2．造影Smart 3Dの血管描画性：造影Smart 3Dの腫瘍血管像を，“全体が明瞭”，“一部不明瞭”，“評価困難”の三段階に分けて造影3D従来法と対比した結果，造影Smart 3Dの腫瘍血管像は従来法よりも有意に明瞭と判定された．とりわけB-modeで内部エコーレベルが高い結節でその差は歴然としていた．
【結語】
肝癌における造影Smart 3Dの血流診断能は造影3D従来法に劣らず，また腫瘍血管の立体像は従来法よりも高精細であり，肝癌の臨床応用における今後の発展が期待される．
【参考文献】
1）Ohto M et al: Vascular Flow Patterns of Hepatic Tumors in Contrast-Enhanced 3-Dimensional Fusion Ultrasonography Using Plane Shift and Opacity Control Modes.: J Ultrasound Med 24:49-57，2005.