Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器2 消化器横断領域 消化器領域における超音波の最新技術

(S237)

Shear wave elastographyのDispersion(粘性)imaging-肝病態評価における有用性-

Assessment of liver elasticity and viscosity using ultrasound shear wave dispersion: a study of hepatic fibrosis and inflammation in a rat model

杉本 勝俊, 森安 史典, 糸井 隆夫

Katsutoshi SUGIMOTO, Fuminori MORIYASU, Takao ITOI

1東京医科大学消化器内科, 2国際医療福祉大学山王病院がん局所療法センター

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University, 22. Department of Gastroenterology and Hepatology, International University of Health and Welfare, Sanno Hospital

キーワード :

【背景・目的】
生体は粘性と弾性を併せ持つ粘弾性体である.しかし,現在市販されている超音波エラストグラフィーは,生体は完全弾性体と仮定し,粘性を無視して弾性率のみを測定している.今回我々は,四塩化炭素(CCL4)投与にて急性肝障害モデルと肝線維化モデルを作製し,各種病態における粘性と弾性との関係につき考察した.
【方法】
5週齢の雄性SDラット15匹を以下の5群に分類した:G1(n=3):コントロール群;G2(n=3):CCL4週2回隔日投与群;G3(n=3):CCL4週4回連日投与群;G4(n=3):CCL4週2回6週間投与群;G5(n=3):CCL4週2回10週間投与群.G2,G3は急性肝障害モデル,G4,G5は肝線維化モデルとした.超音波診断装置は東芝社製i800を使用し,各群のラットに対し開腹下に超音波エラストグラフィーを行った.弾性率(kPa)および粘性率に関連したdispersion slope([ml/s]/kHz)を計測し,各群におけるそれらの数値を比較した.
【成績】
弾性率とdispersion slopeとの間には有意な相関関係は認めなかった(r=0.44,P=0.11).弾性率はG1からG5にかけて段階的に上昇する傾向を呈した(Jonckheere-Terpstra test: P<0.05).一方,dispersion slopeはG1からG5にかけて有意な傾向は認めなかった.肝線維化モデル(8.38±1.52)は急性肝障害モデル(6.25±1.48)と比べ有意に弾性率が上昇していた(P<0.05).一方,急性肝障害モデル(12.59±2.66)は肝線維化モデル(9.48±0.77)と比べ有意にdispersion slopeが上昇していた(P<0.05).
【結論】
超音波エラストグラフィーによる弾性は主に肝線維化を反映し,粘性は主に炎症を反映していた.粘性は弾性とは独立した指標であり,肝臓の病態を評価する上で有用と考えられた.