Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器1 肝臓 脂肪性肝疾患の超音波臨床 ~up to date~

(S235)

脂肪肝の病理 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を中心に

Pathology of fatty liver, focusing on NASH

鹿毛 政義

Masayoshi KAGE

久留米大学先端癌治療センター

Molecular Targeting Therapeutics Division, Research Center for Innovative cancer therapy

キーワード :

脂肪肝は様々な疾患で観察される.まず最近関心を集めているNASH(nonalcoholic steatohepatitis)の病理について説明する.
次に脂肪肝を呈する,いくつかの肝疾患を取上げ概説する.
【NASHの病理】
A. NASHの肝病理組織像と診断基準:NASHの疾患概念は,アルコール性肝障害に類似するという病理形態変化を基盤としている.つまりNASHの診断は肝病理形態に基づいてなされるものであり,その特徴は,大・小の滴性脂肪化,脂肪肝炎,肝細胞の風船化ballooning,マロリー・デンク体MB,肝細胞周囲性の線維化などである.病変は,線維化の進行ととに中心帯領域の脂肪化や肝細胞周囲性の線維化から,次第に門脈域の炎症が目立つようになり,線維は伸展する.NASHの病理診断に際しては,このような病理診断の指針を参考に,1つの病理所見にとらわれず,全体の組織変化に注目を払い,総合的に評価すべきである.
B. NASHの分類(重症度および進行度評価):NASHが脂肪肝炎という炎症を病態の基盤とし,肝硬変への進展の自然歴を有する疾患である.従って,重症度および進行度の客観的評価には肝生検は有用である.NASHの分類について要点を説明する.肝生検評価の問題点も指摘したい.
C. NASHとアルコール性脂肪肝炎(ASH)との病理像の違い:NASHの病理組織は,当然ASHに類似するが,両者間に若干組織所見の程度や頻度が異なることが報告されている.NASHとASHとの比較では,前者に肝細胞の糖原核,肝細胞周囲性線維化などの所見の頻度が高かったとの報告や,MBの形態についてもNASHのMBは細いとの報告もある.
F. C型慢性肝炎とNASH:C型慢性肝炎の組織像の特徴として,肝細胞の脂肪化が挙げられ,脂肪滴の沈着の程度は軽度であるが,その頻度は高い.C型慢性肝炎の線維化の進展について,肝細胞の脂肪化の程度の方が,実質域の壊死・炎症所見よりも,より強く相関するとの報告もある.
G. NASHに関連した肝硬変・肝細胞癌(肝癌):NASHの自然史は十分に明らかにされていない.NASHの10~20%は肝硬変へ進展すると推定されている.NASHが肝硬変に進展した場合,NASHの組織学的特徴,すなわち脂肪肝,肝細胞の風船化,MBなどNASHの特徴とされる所見が失われ,いわゆる”Burn-out”cirrhosisとなる.NASHには肝細胞が合併することが知られている.肝発癌のプロセスについては不明である.肝癌合併症例の中には,中分化肝癌の辺縁に高分化肝癌が存在する症例があり,ウイルス性肝硬変から発癌と同様に多段階的に癌の脱分化が生じる可能性がある.
【脂肪肝を来たす疾患の病理】
代謝性疾患である,銅代謝異常のウイルソン病,酸性リパーゼ欠損症の一つであるコレステロールエステル蓄積症CESD,シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞NICCDと成人発症シトルリン血症ⅡCTLNⅡを取上げ,夫々の基本的な肝病理について概説し,肝病理形態の多様性について説明する.