多田 俊史, 熊田 卓, 豊田 秀徳

Toshifumi TADA, Takashi KUMADA, Hidenori TOYODA

大垣市民病院消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
近年，非アルコール性脂肪性肝疾患（NAFLD）の患者増加に伴い，脂肪肝診断の重要性が高まっている．病理学では，近年5％以上の肝細胞に脂肪滴を認めるものを脂肪変性と定義している．これまで脂肪肝の診断は超音波（US）やCTで行われることが多く，特にUSは30％以上の肝内脂肪化を有する場合には良好な感度・特異度が報告されている．最近，MRIによる肝内脂肪化率の定量が可能となった．今回，US脂肪肝スコアとMRIにより定量化された肝脂肪化率および臨床データとの比較・検討を行った．さらにNAFLD肝生検施行例においてUSとMRIの比較も追加検討した．
【方法】
対象は慢性肝疾患の精査においてUS脂肪肝スコアおよびMRI（IDEAL-IQ法による脂肪測定（proton density fat fraction（PDFF）値）およびElastograpy施行）が施行された135例である．年齢は71（63-68）歳で，男性/女性は79/56例，背景肝（B/C/NBNC）は．17/87/31例であった．US脂肪肝スコアは既報（Hamaguchi, AJG, 2007）より算出．MRIの使用装置はGE社製のDiscovery MR750Wで，既報（Imajo, Gastroenterology, 2016）より脂肪化Grade（カットオフ値；Grade 1以上：5.2％，Grade 2以上：11.3％，Grade 3：17.1％）ごとに分類し，臨床データも含めて比較した．
【成績】
（1）US脂肪肝スコア0/1/2/3/4/5/6はそれぞれ88/14/13/5/9/5/1例であった．（2）全体のPDFF値（中央値，四分範囲）は2.5（1.4-4.2）％で，脂肪化Grade 0/1/2/3はそれぞれ108/22/2/3例であった．（3）US脂肪肝スコアとPDFF値の相関はr＝0.747，p＜0.001で強い相関が認められた．（4）US脂肪肝スコア0-2/4-6別の脂肪化Gradeは107/8/0/0と1/14/2/3であった（p＜0.001，Cochran-Armitage検定）．（5）US脂肪肝スコア0-2/4-6別にBMI：21.9（20.0-23.7）/24.6（22.8-26.7）kg/m2（p=0.003），中性脂肪：85（66-106）/139（91-225）mg/dl（p=0.019），HOMA-IR：2.3（1.4-4.4）/ 6.9（5.0-7.8）（p=0.018）と有意差が認められた．（6）NAFLD肝生検施行例（n=12）においてUS脂肪肝スコアと脂肪滴を認める肝細胞の比率（％）の相関はr＝0.816，p=0.002と強い相関が認められた．またPDFF値と脂肪滴を認める肝細胞の比率（％）の相関はr＝0.902，p＜0.001と極めて強い相関が認められた．さらにSWEとF因子の相関はr＝0.472，p=0.143，MREとF因子の相関はr＝0.796，p=0.003であった．
【考案】
US脂肪肝スコアとMRIによるPDFF値の間には高い相関が認められた．さらに生検例においてもUS脂肪肝スコアおよびPDFF値とも脂肪滴を認める肝細胞の比率（％）と強い相関が認められた．
【結語】
US脂肪肝スコアおよびMRIによる脂肪化面積の評価はいずれも脂肪肝診療において有用な検査法と考えられた．