Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 循環器
ワークショップ(オーディエンス・レスポンスシステム) 循環器2 我が国の心エコー図検査の実態

(S224)

技師に求める心エコー図検査の報告書

How to write report on echocardiographic examination?

山田 博胤, 楠瀬 賢也, 西尾 進, 佐田 政隆

Hirotsugu YAMADA, Kenya KUSUNOSE, Susumu NISHIO, Masataka SATA

1徳島大学病院循環器内科, 2徳島大学病院超音波センター

1Dept of Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, 2Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital

キーワード :

【1.なぜ技師が報告書を書かなければいけないのか】
私は自分の患者の心エコー図検査は,できる限り自分でスキャンするようにしている.それは,プローブを持ってリアルタイムのエコー図を見たものにしか分からない世界があると信じているからである.しかし,自分でエコー検査を行わない大多数の医師にとって,報告書とそれに添付された静止画像,サーバーに保存された動画像のみが,得られる情報のソースである.
理想を言えば,検査を依頼した医師は,報告書に記載されたすべての計測値を確認し,記録されたすべての静止画と動画像を見てそれらの計測値が正しく計測されたか判断した上で,自らが診断を導くべきである.しかし,それができる医師は少ない.できるとしても時間がない.心エコー図学の発展,進歩に伴って,報告書に記載される計測項目は増え続けている.それらすべての計測値の意味,ピットフォールなどを理解し,読影することができるのは,数少ない専門医に過ぎない.だからこそ,報告書を書くことが技師に求められている.技師が伝わる報告書を記載してくれれば,心エコー図の専門家でない医師でも,心エコー図検査の恩恵を患者に与えることができる.
【2.報告書にどこまで書くのか】
1枚の心エコー図検査の報告書は,1本の論文に匹敵する.”Background”には,1)なぜこの患者にエコー検査が依頼されたのか,2)血圧,聴診などの身体所見,3)心電図所見などその他の検査結果,などが記載される.”Methods”は,どんな検査を行い,何を計測したか,そして,その結果が“Results”である.さらに,“Discussion”で,それらの計測値の解釈と判断を行い,導き出される病態はどうなのか,前回値と比べてどうなのか,分からなかったことは何なのか(限界),のような考察が行われ,”Conclusion(=診断)”が導かれる.
施設によっては,技師は診断をすべきではないというポリシーで,考察のない計測値のみのレポートが作成されているかもしれない.しかし,流れ作業で計測のみを行う検査は楽しくないし,それでは進歩もない.せっかく検査をしたのに,見逃しや誤診が増えかねない.それを避けるには,1例,1例,病態を吟味し,医師の疑問に答えることができる考察をしてほしい.
本講演では,このような報告書にまつわる私見について述べ,徳島大学病院超音波センターにおける技師の育成法も紹介したい.