鈴木 健吾

Kengo SUZUKI

聖マリアンナ医科大学循環器内科

Division of Cardiology, Department of Internal Medicine, St. Marianna University School of Medicine

キーワード :

2016年にヨーロッパ心臓学会，呼吸器学会が合同で発表した肺高血圧に関するガイドラインによると，三尖弁逆流速度が3.4m/s，右室右房間圧較差（TRPG）にすると46mmHg以上は，これだけで肺高血圧の可能性が高いとしている．三尖弁逆流速度が2.9から3.4m/s，TRPGにすると34から46mmHg未満は，これ以外の肺高血圧を示唆する心エコー所見を併せて評価する必要があるとしている．すなわちTRPG=35mmHgは肺高血圧と言える場合と言えない場合がある．TRPG以外の肺高血圧を示唆する所見には，右房，右室拡大，心室中隔の扁平化，右室流出路血流の加速時間短縮，肺動脈弁逆流速度の上昇，肺動脈径や下大静脈径の拡大などが挙げられ，これらを併せて総合的に判断する必要がある．TRPGの測定は時に難しいことがある．三尖弁逆流の記録はゲインやフィルターの設定を適切に行う必要があるが，三尖弁逆流波形のピーク付近にヒゲのようなノイズが生じてしまい，どこで測定するのか迷うことがある．TRPG以外の所見が肺高血圧を強く疑う場合は，TRPGを高めに測定することもコツではないだろうか．その他，TRPGには右室流出路狭窄，肺動脈弁狭窄，三尖弁離開による高度三尖弁逆流また，右心機能も影響するため肺高血圧診療における心エコーのピットフォールも交えて述べる予定である．