Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 循環器
シンポジウム 循環器5 負荷心エコーの積極活用(虚血以外)

(S211)

僧帽弁疾患における運動負荷心エコー検査

Exercise Stress Echocardiography of Mitral Valvular Heart Disease

天野 雅史, 三宅 誠, 岡谷 萌, 大谷 祐哉, 阿部 梨栄, 松谷 勇人, 橋和田 須美代, 桑野 和代, 泉 知里

Masashi AMANO, Makoto MIYAKE, Megumi OKATANI, Yuya OTANI, Rie ABE, Hayato MATSUTANI, Sumiyo HASHIWADA, Kazuyo KUWANO, Chisato IZUMI

1天理よろづ相談所病院循環器内科, 2天理よろづ相談所病院臨床検査部

1Department of Cardiology, Tenri Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, Tenri Hospital

キーワード :

「僧帽弁疾患」は,僧帽弁逆流症と僧帽弁狭窄症に分けられる.日常臨床において悩ましいのは,各々の適正手術時期である.明らかに重症かつ有症状の場合は良いが,無症候性や症状と重症度が解離する症例では手術時期に関して判断に苦慮する.僧帽弁逆流症の手術適応に関するガイドラインでは左室駆出率(LVEF)<60%または左室収縮末期径(LVESD)≧40mmの場合はclass I,LVEF>60%かつLVESD<40mmの場合は最近生じた心房細動または安静時肺高血圧(SPAP>50mmHg)の場合にclass IIaとされている.しかし,これらの基準を満たさない無症候性重症僧帽弁逆流症または症候性中等度僧帽弁逆流症の場合,臨床現場では手術適応の判断に迷うことが多い.この際に,運動負荷心エコー検査が有用で有る.運動負荷後の肺高血圧(SPAP>60mmHg)または逆流量の重症化(有効弁口面積≧0.4cm2)を陽性と判定し手術適応の一助となる.僧帽弁狭窄症では運動負荷による肺高血圧症(SPAP>60mmHg)または負荷後僧帽弁平均圧較差≧18mmHgで陽性と判定される.また,近年リウマチ性僧帽弁狭窄症例は減少し,僧帽弁形成術後の相対的僧帽弁狭窄症や非リウマチ性僧帽弁狭窄症例が増加している.このような症例は「リウマチ性」とは異なる転帰をたどることが知られている.これらの疾患の重症度や症状の有無を判断するのにも運動負荷心エコー検査は有用であると考えられる.
当院では,半座位自転車エルゴメータ負荷心エコーの導入が困難であり,ポータブルである仰臥位用負荷量可変式エルゴメータ「てらすエルゴII」を用いて運動負荷心エコー検査を施行している.僧帽弁術後症例を含めた僧帽弁疾患に対して積極的に負荷エコー検査を施行しているが,市中病院ならではの苦労や負荷心エコー検査における疑問点も含めディスカッションできればと考える.