渡部 朋幸, 高野 真澄

Tomoyuki WATANABE, Masumi IWAI-TAKANO

¹医療生協わたり病院内科・循環器内科, ²福島県立医科大学附属病院集中治療部

¹Division of Cardiology and Internal medicine, Health Co-op. Watari Hospital, ²Intensive care unit, Fukushima medical university hospital

キーワード :

【背景】
持続性心房細動（AF）は洞調律（SR）と比し心拍出量が低下し，運動耐容能を低下させる．また，SRにおいて運動耐容能と動脈エラスタンスは逆相関することが知られている．一方，自覚症状のないAF患者もおり，AFの運動耐容能低下の機序は十分検討されていない．
【目的】
AF患者の運動耐容能低下の機序を検討すること．
【対象と方法】
対象は症候限界エルゴメーター負荷心エコー図検査を行った患者178人．虚血陽性，ペースメーカー調律，中等度以上の弁膜症を除外した．最大運動強度及び体重から推定最高酸素摂取量（VO₂）を算出し，運動耐容能の指標とした．傾向スコア法を用い，年齢，高血圧，OMI，心不全既往の有無をAF群とSR群の2群でマッチさせた．2群間におけるVO₂，安静時及び最大運動負荷時の標準的心エコー図指標および動脈エラスタンス（Ea）を比較し，さらに全例においてVO₂の規定因子を多変量解析にて推定した．
【結果】
マッチ後，AF群（n=58），SR群（n=58）の2群間において，年齢，EF，安静時E/e’に差を認めなかった（AF vs. SR;年齢：74.7±8 vs. 74.9±8歳，EF: 54.4±13
vs. 56.4±11％，安静時E/e’：13.9±5 vs. 14.1±9，各々NS）．一方，AF群におけるVO₂はSR群と比し有意に低値（13.8±5 vs. 16.0±5mL/kg・min, P＜0.05），ΔEa（最大負荷時-安静時）は有意に高値（2.2±2 vs. 1.3±1mL/kg・min, P＜0.05），最大負荷時Eaは高値の傾向を示した（5.2±3 vs. 4.4±1mL/kg・min, P=0.06）．AF群においてVO₂は安静時Eaと有意な負の相関を示し（R=-0.36，P＜0.01）した．全例における多変量解析において，VO₂の規定因子は年齢，安静時動脈Ea，安静時E/e’であり，調律やEFはVO₂を規定しなかった．
【結語】
AFでは負荷時の動脈エラスタンス増加が運動耐容能の低下と関連している可能性が示唆された．