Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 循環器
シンポジウム 循環器4 心エコー図の正常値とは

(S206)

高齢者の心エコー正常値をどのように考えるか

Normal values of echocardiography in elderly

瀬尾 由広

Yoshihro SEO

筑波大学医学医療系循環器内科

Cardiovascular division, University of Tsukuba

キーワード :

日本は人類史上初めて経験する高齢化社会を迎えた.80歳を超えても生活レベルが保たれた高齢者が増加し,医療技術の進歩と相まって高齢者へも比較的侵襲が大きい治療法が行われるようになった.本邦にも導入された経皮的大動脈弁置換術(TAVR)はその代表であり,今後様々な治療法が超高齢者に対して施行されることが予想される.様々な治療法の適応判断には心エコー図は必須であり,非侵襲的で高齢者に優しい検査法であることから今後益々重要な検査法になると考えられる.
しかし,高齢者においては生活活動レベル,認知機能および合併症を含めて多様な臨床背景を持ち合わせており,一般に70歳未満で作られた画一的な基準値で心形態や機能を評価することが妥当なのか否かは不明である.残念なことに,これまでの殆どの研究において80歳以上は除外されてきたため,後期高齢者や85歳以上の超高齢者に関する心エコー図の研究は殆どなく,正常高齢者の基準となるデータでさえ報告されていない.
このため,まず生理的な加齢のプロセスにおいて,左室を含めて心臓にどのようなリモデリングが生じ,心機能がどのように変化するのかを明らかにする必要がある.更に,後期高齢者に多い左室駆出率保持型心不全(Heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)や大動脈弁狭窄症についても高齢者の健常高齢者の基準値をもとに比較検討し,それらの特徴を明らかにする必要が有る.加齢は,あらゆる臓器や身体能力を変化させるので,後期高齢者においては,何をもって異常と判定するかは議論があるところである.そこで,高齢者における心エコー図データの基準値確立に関する多施設前向き研究(Japanese eLderly data Of Normal echocardioGraphy(J-LONG)studyを開始した.
本研究では,心疾患の既往を有さず,心エコー図上明らかな器質的心疾患を有さず,かつ,フレイルがなく,認知機能の低下がなく,社会生活を送っている75歳以上の高齢者を健常後期高齢者と定義し,その心エコー図の計測値の基準値を確立するため,現在全国の施設よりデータを収集している.この研究を通して後期高齢者における心エコー図指標の基準値を定めることができ,
フレイルや認知機能を評価し,心形態や心機能に関する付加的な要素を明らかにできることが期待される.