英文誌(2004-)
特別プログラム 循環器
シンポジウム 循環器4 心エコー図の正常値とは
(S205)
欧州正常値研究 NORRE studyから見えたもの
Findings from NORRE study :Normal Reference Ranges for Echocardiography Study from EACVI
黄 世捷
Seisyou KOU
聖マリアンナ医科大学循環器内科
Cardiology, St. Marianna University School of Medicine
キーワード :
NORRE study(Normal Reference Ranges for Echocardiography Study)はEuropean association of Cardiovascular imaging(EACVI)が主導となり,EACVIの認定する21施設と米国の1施設を含む22施設から,25-75歳の健常人の経胸壁心臓超音波画像を集積し,欧州における心臓超音波検査の正常値の策定を目指した前向き研究である.
本研究では,前向きにデータ集積を行ない,各施設での解析は行わず,コアラボに相当するベルギーリエージュ大学で全データを解析している.
2015年に734例(865例から131例除外)の健常データから2D指標を報告している.
実用上の利便性を考慮して左房,右房ともに容積をSimpson法,Area-Length法の両方で測定し,右室は拡張・収縮末期面積だけでなく,右室流出路径,詳細な右室径(基部・中部・長軸径)を報告している.
注意すべき点として,左室拡張末期および収縮末期の定義が心電図に準じており,本邦で広く用いられる弁の開放・閉鎖とは僅かに測定時相が異なる点と,肥満の定義が異なる点である.
また2名の検者のみで解析を行ったにもかかわらず右室の拡張・収縮末期面積は級内相関がそれぞれ0.78,0.81と低く,本指標を用いたFractional Area Changeの適応に関しては十分な注意を要する.
同年にDoppler dataの正常値を報告している.症例数は449例と少ないものの,tissue Doppler指標では左室中隔,側壁だけで無く,心尖部二腔像での前壁・後壁のs’,e’,a’およびそれぞれでのE/e’を報告している.また三尖弁輪のs’,e’,a’を報告している.
2016年に大動脈弁周辺の径に特化し,正常値を報告しているが,今後はJAMP study同様,3D正常値の策定や,Strainの策定が望まれる.