Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 循環器
シンポジウム 循環器3 大動脈弁形成を意識した心エコー

(S202)

心エコー図診断で知っておくべき大動脈弁形成術のテクニック

Technique of aortic valve repair to be known in the diagnosis of echocardiography

國原 孝

Takashi KUNIHARA

心臓血管研究所付属病院心臓血管外科

Department of Cardiovascular Surgery, The Cardiovascular Institute

キーワード :

大動脈弁形成術はいまだ確立しておらず,発展途上の術式である.その成功の鍵は,心エコー図による術前・術中診断が握っていると言っても過言ではない.そこで形成術の精度向上のためには,心エコー図診断医も大動脈弁閉鎖不全症の病態のみならず大動脈弁形成術のテクニックについても熟知しておく必要がある.そこで現時点でのこの分野における標準術式について紹介する.それにはBrussels groupによる大動脈弁閉鎖不全の機序による分類に即して議論するのが実践的である.
1)Type Ia:人工血管によりsino-tubular junctionを弁輪径のワンサイズあるいは10%縫縮することによりコントロール容易であるが,過縫縮によるiatrogenic prolapseにも注意が必要である.
2)Type Ib: Aortic root remodeling+annuloplastyとValsalva graftを用いたaortic valve reimplantationの二種類にほぼ標準化しており,両者とも互角の良好な長期成績を残している.Annuloplastyは本邦ではexternal suture annuloplastyとexternal flexible ring annuloplastyの二種類がおもに施行されているが,その優劣の判定にはまだ時間がかかるとおもわれる.
3)Type Ic:上述のannuloplastyで,弁尖長(geometric height)を考慮しつつ,体表面積による標準弁輪径に縫縮することで制御可能である.
4)Type Id:活動性感染性心内膜炎でなければ二弁尖以内,三カ所以内の弁尖穿孔であれば自己心膜パッチによる形成の成績は良好である.Fenestrationに関しては術中に初めて気づくことも多く,術前診断が重要である.
5)Type II: Central plicationによりeffective heightを8-10mmに揃える手技はほぼ標準術式と言って良いであろう.
6)Type III:弁尖長が三尖弁で16mm以内,二尖弁で19mm以内であれば形成可能であるが,それ以下であると自己心膜での補填が必要になり,その遠隔成績は自己心膜の耐久性に依存することになり,いまだchallengingな領域である.
7)その他,二尖弁では交連間の角度を180度にするか,native orientationのままにするか,それともincomplete fusion typeでは三尖弁化するか,いまだ議論の多い分野である.近年では術後狭窄の観点より,基部を積極的に置換するという意見も多いが,いまだ広くコンセンサスを得られるには至っていない.
これらの病変が単独で存在することはむしろ稀で,大抵はいくつかの病変が混在している.そこで周術期の心エコー図による病変の正確な診断は非常に重要であり,診断医にはこれらの病変と術式に対する幅広い知識が求められる.基本的には全ての機序において逆流の制御は可能であるが,標準化している分野としていない分野がいまだ混在しており,これらについて概説する.