Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 循環器
シンポジウム 循環器3 大動脈弁形成を意識した心エコー

(S201)

弁輪拡大による大動脈弁閉鎖不全の要因に関する検討~3D経食道エコーの計測精度~

Related factor of aortic regurgitation caused by root dilatation: A comparison of measurement accuracy using 3D transesophageal echocardiography

村井 大輔, 小松 博史, 鈴木 里穂, 小林 雄太, 小森山 弘和, 鳥羽 真弘, 浅川 響子, 檀ノ浦 裕, 牧野 隆雄, 甲谷 哲郎

Daisuke MURAI, Hiroshi KOMATSU, Rho SUZUKI, Yuta KOBAYASHI, Hirokazu KOMORIYAMA, Masahiro TOBA, Kyoko ASAKAWA, Hiroshi DANNOURA, Takao MAKINO, Tetsurou KOUYA

市立札幌病院循環器内科

Cardiovascular Medicine, Sapporo City General Hospital

キーワード :

【背景】
大動脈形成術においては大動脈弁複合体(AVC)のより正確な弁尖形態の定量評価が求められる.
【目的】
弁尖に器質的変化のない大動脈閉鎖不全症(AR)におけるAVCの2Dおよび3D経食道心エコー(TEE)による弁輪形態の定量測定値とARとの関係を明らかにし,3DTEEによる弁輪計測値の精度を比較検討する.
【方法】
対象は2016年4月から12月に当施設にて3DTEEを施行し,三尖で大動脈弁尖に中等度以上の器質的変化を認めない連続29症例.PHILIPS社製EPIQ7cと3DTEEプローブで大動脈弁複合体の2Dおよび3Dデータを取得した.3Dデータは3D解析ソフト3DQで解析し,AVCの血流軸に直行する拡張末期の左室大動脈接合部(VAJ), Valsalva洞,STJ断面を同定,それぞれの断面積(それぞれVAJA, ValA, STJA),断面周長(VAJ周長,Val周長,STJ周長)および断面径(VAJ3D短径,Val3D三軸平均径,STJ3D短径)を計測,同様に2DTEE画像から各断面の前後径(VAJ2D前後径,Val2D前後径,STJ2D前後径)を計測した.ARのseverityはVena Contractaで評価し中等度以上のARの有無で2群に分け各指標を群間で比較,ARの有無との関連をステップワイズ(減少法)ロジスティック回帰分析にて多変量解析した.それぞれの計測でARと関連ある独立因子に関してROC解析を行い,AUCおよび特異度,感度にて正確度を比較した.
【結果】
29例中8例(中等度2例,重症6例)に中等度以上のARを認めた.2群間で年齡,性別,BSAに差はなかった.3DTEEで計測された断面積,断面周長,断面径および2D前後径はVAJ, Valsalva洞,STJのいずれの断面でもARあり群はARなし群より有意に大であった(VAJA: ARなし群4.49±0.89 vs ARあり群5.48±1.28 cm2 p=0.003,ValA: 8.80±2.19 vs 12.34±1.97 cm2 p<0.001,STJA: 5.74±1.13 vs 9.90±2.02 cm2 p<0.0001,VAJ周長:76.8±8.3 vs 84.9±10.4 mm p=0.04,Val周長:107.7±14.0 vs 130.8±10.2 mm p<0.001,STJ周長:85.5±8.2 vs 112.2±12.1 mm p<0.0001,VAJ3D短径:20.8±2.3 vs 23.9±3.0 mm p=0.005,Val3D三軸平均径:31.8±4.0 vs 38.2±3.4 mm p<0.001,STJ3D短径:26.0±2.9 vs 34.5±3.9 mm p<0.0001,VAJ2D前後径:21.7±3.1 vs 25.5±2.8 mm p=0.006,Val2D前後径:32.9±5.2 vs 41.3±5.9 mm p=0.001,STJ2D前後径:26.2±3.6 vs 34.2±4.2 mm p<0.0001).多変量解析では3Dの断面積,断面周長,断面径および2D前後径いずれもSTJのみがARと関連した独立因子であった(STJA:odds 3.66 95%信頼区間(CI)1.39-9.66 p=0.009,STJ円周長:odds 1.22 95%CI 1.05-1.41 p=0.008,STJ3D短径:odds 1.79 95%CI 1.18-2.71 p=0.006,STJ2D前後径:odds 1.69 95%CI 1.13-2.53 p=0.011).ARの有無を鑑別するROC曲線のAUCはいずれも0.9以上と良好であったが,3DTEEで計測されたSTJAがAUC,特異度,感度ともにもっとも高値であった(STJA:AUC 0.97 cut-off 6.56特異度0.86感度1,STJ円周長:AUC 0.96 cut-off 91.6特異度0.81感度1,STJ3D短径:AUC 0.95 cut-off 27.6特異度0.76感度1,STJ2D前後径:AUC 0.93 cut-off 29.7特異度0.89感度0.88).
【結語】
弁尖に中等度以上の器質的変化のない三尖弁ARではVAJからSTJの弁輪は有意に拡大していた.多変量解析では3Dと2DTEEのいずれの計測法でもSTJのみが中等度以上のARと独立して関連する因子であった.ARの有無を鑑別する精度は2Dよりも3DTEEによる計測値,特にSTJ断面積が正確であった.大動脈形成術の適応となる弁輪拡大によるARでは3DTEEによる基部形態の正確な計測が重要と考えられた.