Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 工学基礎
シンポジウム 工学基礎4 光超音波イメージングの新展開

(S188)

光学的手法による透明媒体の減衰係数計測

Evaluation of attenuation coefficients in transparent medium using optical technique

工藤 信樹, 飯島 優季奈

Nobuki KUDO, Yukina IIJIMA

北海道大学大学院情報科学研究科

Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University

キーワード :

【はじめに】
光学的手法はふるくから超音波音場の可視化に利用されている.しかし得られる音場像には,光が透過してきた全経路上の音圧情報が積算されているため,音場中での光の曲がりが無視できない条件では画像から音圧波形を求めるのが難しい.我々はフォーカストシャドウグラフ法を用いた音場可視化に関する検討を行ってきた.本発表では,この手法を用いて伝搬媒体の減衰係数の計測の可能性について検討した結果を報告する.
【方法】
フォーカストシャドウグラフ法の光学系は,照明光源とカメラでのみで構成される.光源を出た光が水中を透過する際に音場の圧力勾配により曲げられ,音場を反映した明暗分布を生じた透過光をカメラで捉える.さらに,超音波照射が有無の2条件で撮影した輝度画像を計算機上で差分処理し,高感度な音場可視化を実現する.光源には波長850 nm,パルス幅5 nsの近赤外レーザダイオードを用い,カメラには16 bitの階調をもつ冷却式CCDカメラを用いた.超音波振動子には中心周波数10 MHzの平面振動子を用いて約100 kPaの広帯域パルス波を発生した.透明な減衰媒体としてひまし油を用いた.また,メンブレンハイドロホンによる音圧計測も行った.
【結果および検討】
ひまし油中を3.2 mmと8.1 mm伝搬した後の音場像から輝度波形を作成した.また,ひまし油中を3.1 mmと8.0 mm伝搬し,その後水中を27 mm伝搬した音圧波形をハイドロホンにより計測した.両者の周波数スペクトルと,それらの比から求めた周波数依存性減衰をFig. 1に示す.一般に輝度波形と音圧波形は異なるため,輝度と音圧波形の周波数スペクトルには違いが見られた.しかし,それらの比から求めた周波数依存性減衰は良く一致した.
【まとめ】
フォーカストシャドウグラフ法を用いてひまし油中の超音波音場の可視化し,周波数依存性減衰を評価した.計測結果から求められた減衰係数は,ハイドロホンで求めたものと良く一致した.従来定量的評価には不向きとされてきた光学的手法であるが,媒質の減衰係数には利用可能と考えられた.