Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 工学基礎
シンポジウム 工学基礎3 超音波照射と微小気泡が生じる機械的作用を用いた新治療技術

(S185)

ナノバブルの生体への影響とその応用方法

The Effect of Nanobubbles to Cells and Its Medical Application

立花 克郎

Katsuro TACHIBANA

福岡大学医学部解剖学講座

Department of Anatomy, Fukuoka University School of Medicine

キーワード :

【目的】
これまで我々は微小気泡を利用した様々な超音波治療装置及び超音波分子診断用造影剤の研究開発に取り組んできた.近年,数種類の薬液を小型ヴァイル容器に高圧ガスと共に封入し,上下左右の方向に超高速回転で撹拌する革新的なバブル発生装置で非常に均一で高密度のナノバブルを作れることを見いだした.今回,これらのナノバブルの生体への影響を調べた.
【方法】
ナノバブルの作製は,特殊容器の中の空気をPerfluoropropane(C3F8)ガスで置換し,牛胎児血清FBS(+または―)のMEMまたはRPMI1640細胞培養用培地を入れ,気密プラスチック製キャップで閉じた.5分間冷却後,6500 rpmで60秒間高速撹拌した(上下左右方向反復).この工程を数回繰り返し,ガスの核を含んだナノバブル(直径:100~500nm)を作製した.細胞培養は,ヒト白血病細胞株U937,ヒト口腔扁平上皮癌細胞HSC-2を,10%FBSを含むRPMI1640細胞培養用培地またはDMEM培地で培養を用いて,37℃,5%CO2の環境下で培養した.ナノバブルを添加後,細胞懸濁液に超音波照射15秒間行った.超音波照射条件は,周波数1.011 MHz,音響強度0.3-1.0W/cm2で行った.照射後24-48時間培養し,MTT法により細胞の生存率とアポトーシスを調べた.また,ナノバブルの超音波造影効果を高周波超音波画像装置(Prospect, S-Sharp社)のBモード画像で可視化を試みた.
【結果・結論】
牛胎児血清FBSが含まれている場合と含まれない場合のMEMまたはRPMI1640細胞培養液でナノバブルの濃度・大きさが著しく変化することを確認した.また,培養液中のナノバブルの濃度によって細胞殺傷率とアポトーシス誘発率の依存が認められた.一方,FBSが含まれるナノバブルが含まれないものより超音波細胞殺傷率が高かったことからナノバブルの大きさも細胞へ何らかの影響を及ぼしたと推測された.今回のナノバブルは高周波超音波画像装置で可視化できたことから今後,ナノバブルは診断治療の両方面で利用できることが示唆され,今後,新しいセラノステックス材料として細胞培養液ナノバブルが応用できると期待された.