Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 工学基礎
シンポジウム 工学基礎3 超音波照射と微小気泡が生じる機械的作用を用いた新治療技術

(S185)

音場分布の空間移動に対する細胞-微小気泡凝集体の挙動観測とその解析

Observation and analysis of behavior of bubbles-surrounded cells according to the movement of acoustic distribution

桝田 晃司, 追立 理喜, 下村 明栄, 和田 洸, 望月 剛, 小田 雄介, 鈴木 亮, 丸山 一雄

Kohji MASUDA, Riki OITATE, Akie SHIMOMURA, Hikaru WADA, Takashi MOCHIZUKI, Yusuke ODA, Ryo SUZUKI, Kazuo MARUYAMA

1東京農工大学大学院生物システム応用科学府, 2帝京大学薬学部

1Graduate School of Bio-Applications and Systems Engineering, Tokyo Univ. of Agriculture and Technology, 2Faculty of Pharma-sciences, Teikyo University

キーワード :

【目的】
我々は,特別に調製した細胞を患者に注入する免疫細胞療法などに応用するため,細胞の周囲に微小気泡を付着させた凝集体を形成[1]し,音響放射力を利用して細胞を血流中で運搬するための技術を開発している.これまでは,細胞を包含した微小気泡凝集体の,照射音波に対する移動量やその持続性について報告したが,今回は音場分布を移動させることによって,多くの凝集体を効率的に操作するための手法について検討した結果を報告する.
【対象】
本研究では,マウス由来のColon-26細胞の他に,リンパ球の1種であるT細胞についても適用した.それぞれの細胞に特異的に付着する微小気泡(バブルリポソーム)を用い,先行研究と同様の条件で凝集体を形成した.微小気泡と細胞はそれぞれ別々の波長で励起発光するように染色した.
【方法】
水槽中に設置された2個の集束型単板トランスデューサが,蛍光顕微鏡の同一視野内に焦点を形成するような実験系を構築した.視野内にはポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMA)にて成形した微小閉空間を設置し,凝集体を含んだ懸濁液を封入した.ここで形成した定在波音場中の節の空間的位置を視野内で移動させ,凝集体の動態を画像処理により追跡した.図では,中心周波数3MHzで最大音圧250kPa-ppの定在波を形成後,節の位置を右方向に20m/sの速度で掃引した場合の,Colon-26細胞を包含した凝集体の挙動を連続写真で示している.この場合は節の移動速度に対し,30-60%の速度で凝集体が移動したことが分かった.同様の計測をT細胞に対しても適用し,凝集体の挙動を解析した.
【結果】
両方の細胞について,上記の手法で凝集体の動態を制御可能であることを確認した.高音圧で押し出す先行研究の方法に比べ,低音圧の節で移動するため,微小気泡の破壊を押さえることができ,凝集体を制御可能な持続時間が30s以上にまで向上した.これにより凝集体の動態制御に必要な音場の設定範囲が同定できた.
【結論】
本実験により,定在波音場の空間移動に対する細胞を包含した微小気泡凝集体の挙動を解析し,それらを制御するための音場の条件を検討した.
【参考文献】
[1]F. Demachi, et al, Jpn. J. Appl. Phys. 54(2015)07HF19