Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 工学基礎
シンポジウム 工学基礎3 超音波照射と微小気泡が生じる機械的作用を用いた新治療技術

(S184)

Histotripsyによる超音波の非熱的作用を用いる治療応用

Histotripsy: an approach for therapeutic application of non-thermal effects of ultrasound

川畑 健一, 丸岡 貴司, 山中 一宏, 蘆田 玲子

Kenichi KAWABATA, Takashi MARUOKA, Kazuhiro YAMANAKA, Reiko ASHIDA

1株式会社日立製作所研究開発グループ, 2大阪府立成人病センター消化器検診科

1Research & Development Group, Hitachi, Ltd., 2Departments of Cancer Survey and Gastrointestinal Oncology, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases

キーワード :

超音波の治療応用では,HIFU治療と呼ばれる超音波の熱的効果を使用したものが一般的であり,良性・悪性いずれの疾患へも適用が進んでいる.特にここ数年で,癌の骨転移の痛み緩和,および本態性振戦用治療に関して薬事承認(FDAならびにPMDA)を所得した機器が出てきており,実用化が急速に進みつつある.
これに対し,米国Michigan大を中心として,Histotripsyと呼ばれる超音波の非熱的作用,特に機械的作用を用いる治療法の研究開発も進んできている.超音波による機械作用はcavitationにより生成する.従来cavitationはその制御が困難であるとして医療用に超音波を照射する際には生じないようにする傾向があった(超音波診断装置におけるMechanical indexの上限値もcavitationを避けるための指標).Histotripsyにおいては,HIFU治療よりも高い強度の短パルス超音波を用い,その短いパルス照射中のみcavitationを生じることで,制御された状態でcavitationを生じることを実現している.Histotripsyは現在前立腺肥大に関する臨床治験が開始されており,臨床的な価値が評価できる段階まで到達しようとしている.また,前立腺治療以外にも様々な適用が検討されているところである.特に脳内へ経頭蓋的に超音波を照射し,疾病関連部位のみにダメージを生じるという治療に関して有望であると考えられている(先にHIFU治療に関して挙げた本態性震戦など).
なお,Histotripsyの特徴として高い強度のパルスを用いることを述べたが,高い強度を得るには高い集束性が要求されることから,超音波トランスデューサの大型化あるいはトランスデューサ近傍のみが治療対象になることが課題となりうる.我々はこの課題にするため,特にがん治療をターゲットとし,増感剤(相変化ナノ液滴(PCND))により必要な強度を低下させHistotripsyと同様の効果を得る手法の検討を行っている(Bubble-Seeded Histotripsy(BSH)).BSHはhistotripsyの深部臓器への適用,あるいは小型システムの実現等を目指して研究を行っているものである.本発表では,Histotripsy全般に関して概観すると共に,我々の基礎検討結果についても報告する.