Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 工学基礎
シンポジウム 工学基礎3 超音波照射と微小気泡が生じる機械的作用を用いた新治療技術

(S184)

新規マイクロバブルを用いたがんの診断・治療

Diagnosis and therapy of cancer using newly developed micro bubble

大崎 智弘, 村端 悠介, 鈴木 亮, 丸山 一雄

Tomohiro OSAKI, Yusuke MURAHATA, Ryo SUZUKI, Kazuo MARUYAMA

1鳥取大学農学部共同獣医学科獣医外科, 2帝京大学薬学部薬物送達学研究室

1Faculty of Agriculture, Tottori University, 2Faculty of Pharma-Science, Seikyo University

キーワード :

【1.はじめに】
超音波に応答してマイクロバブルが生じるキャビテーションを利用し,腫瘍新生血管の内皮細胞間隙を一時的に開口させることで,腫瘍組織血管外に薬物を送達するドラッグデリバリーシステム(DDS)が研究されている.しかしながら,腫瘍を造影超音波検査で診断し,かつ効率良く治療できるセラノスティクスとしての超音波造影剤は未だにない.そこで本研究では,新規に開発されたマイクロバブルにおける肝臓の病変の診断,およびマイクロバブル,抗がん剤および超音波を用いた新規DDSの抗腫瘍効果について評価を行った.
【2.材料および方法】
2-1.健常犬の肝臓の輝度変化
正常犬の橈側皮静脈に設置した留置針から,ソナゾイドあるいは新規バブル製剤を0.02 mL/kgを投与し,日立アロカ製超音波診断装置(Arietta 60)を用いて肝臓の造影超音波検査を行った.門脈および肝実質に関心領域(ROI)を設定した.経時的に,ROIの造影輝度を評価した.
2-2.肝臓腫瘤の診断
肝臓に腫瘤病変が認められた犬9例に対して,橈側皮静脈に設置した留置針から,新規バブル製剤を0.02 mL/kgを投与した.継時的に日立アロカ製超音波診断装置を用いて腫瘤病変の造影超音波検査を行った.
2-3.体表腫瘤の治療
血管周皮腫罹患犬に対して,新規マイクロバブルを0.02 mL/kgおよびドキシル0.8mg/kgを投与し,超音波発生装置(UST-770)を用いて腫瘍組織に超音波を照射(1 MHz,2 W/cm2,50%)した.
【3.結果】
3-1.健常犬の肝臓の輝度変化
新規マイクロバブルは,ソナゾイドに比べて肝実質の輝度変化は大きくなく,門脈と肝実質の輝度の数値の逆転が約2分速かった.
3-2.肝臓腫瘤の診断
クッパー相において,悪性腫瘍では造影欠損が認められ,過形成では正常実質と同程度に造影された.
3-3.体表腫瘤の治療
治療後,腫瘍内の血流は減少し,増加傾向にあった腫瘍体積は減少した.
【4.考察およびまとめ】
新規マイクロバブルは,動脈相および門脈相におけるコントラストが明瞭であったため,ソナゾイドに比べてクッパー細胞への取り込みが抑制されていると思われた.症例数は少ないが,新規マイクロバブルは,肝臓の病変に対して良性悪性を鑑別することが可能であると思われた.新規マイクロバブル,抗がん剤および超音波を用いたDDSにより,抗腫瘍効果が認められた.以上のことから,新規に開発されたマイクロバブルはセラノスティクス製剤として有用である可能性が示唆された.