Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 工学基礎
シンポジウム 工学基礎2 HIFUの臨床応用

(S181)

Histotripsyを用いた腫瘍治療への新たな展開

Novel approach in ultrasound histotripsy

蘆田 玲子

Reiko ASHIDA

大阪国際がんセンター検診部消化器検診科

Departments of Cancer Survey and Gastrointestinal Oncology, Osaka International Cancer Institute

キーワード :

【緒言】
一般的なHIFU治療は超音波の加熱凝固作用を応用したものであるが,近年Histotripsyと呼ばれる超音波の非熱的作用,特に機械的作用による治療法の研究開発が進んできている.この手法は,加熱凝固治療よりも一桁以上高い強度のパルス超音波を用いて組織を機械的に破壊するものであり,従来のHIFU治療に比べ血流による影響を受けにくい,超音波によるモニタリングが容易といった長所が挙げられる.ただし高い強度が必要とされるため深部適用が困難であり,またトランスデューサの小型化も課題となる.我々はHistotripsyを膵癌などの深部癌治療に応用すべく,増感剤を使用して必要となる超音波強度を低下させる手法の検討を行っている(Bubble-Seeded Histotripsy(BSH)).現在体外からの深部適用あるいは小型化による内視鏡的アプローチの双方を検討している.今回は基礎実験系によるBSHの原理検証および内視鏡的アプローチに関する動物実験検証に関して報告する.
【対象と方法】
超音波の増感剤として,局所投与が可能な過熱パーフルオロカーボン液滴の一種である相変化ナノ液滴(PCND)を使用した.このPCNDを局注後に超音波照射を行うことでBSHの効果を発現させた.超音波照射条件は,1MHzのパルスHIFU(~3kW/cm2, 300波,PRF: 0.1kHz)照射を基本とした.ただし,内視鏡的アプローチにおいては,2,3 MHzでの照射も行った.照射対象は,ファントム(ポリアクリルアミドゲル),摘出臓器(トリ胸肉,ブタ肝臓),マウス(実験腫瘍),ウサギ(実験腫瘍および肝臓),ブタ(肝臓)を用いた.
【結果と考察】
始めに摘出臓器にて通常HIFU強度下でのBSHによる組織構造破壊を確認した.さらに,超音波焦点移動に伴う構造破壊領域の拡大を確認した.これは局注したPCNDが超音波焦点移動により拡散したことを示唆しており,BSHの手法に抗がん剤等を同時に局所投与させることでDrug Delivery System(DDS)効果が得られると考えられた.このDDS効果に関しては,マウス腫瘍を用いた検証によりBSH単体あるいは抗がん剤単体では増殖抑制効果が有意でない条件においても,BSH+抗がん剤により有意に腫瘍増殖が抑制されたことから有用性が確認された.さらに,内視鏡的アプローチ検証のため,細径トランスデューサを用いて経胃的にウサギおよびブタ肝臓にBSHを適用したところ,機械的効果を生じることが確認できた.
【結論】
BSHを用いた超音波機械作用は腫瘍治療に対し有用であり,今後の臨床応用が期待される.