Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 工学基礎
シンポジウム 工学基礎2 HIFUの臨床応用

(S180)

切除不能膵癌に対する強力集束超音波(HIFU)療法

High-Intensity Focused Ultrasound (HIFU) therapy for unresectable pancreatic cancer

祖父尼 淳, 村垣 善浩, 糸井 隆夫

Atsushi SOFUNI, Yoshihiro MURAGAKI, Takao ITOI

1東京医科大学臨床医学系消化器内科学分野, 2東京女子医科大学先端生命医科学研究所先端工学外科学分野

1Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University, 2Faculty of Advanced Techno-Surgery, Tokyo Women's Medical University The Institute of Advanced Biomedical Engineering and Science

キーワード :

【背景】
切除不能膵癌の治療法として抗腫瘍効果および疼痛緩和効果を目的とした低侵襲治療法として注目されているのが,強力集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound; HIFU)療法である.
【目的】
切除不能膵癌患者に対しHIFU治療をおこない,その治療効果と臨床的認容性について検討した.
【方法】
非無作為抽出,非連続登録前向き単施設研究にて,2008年12月より切除不能膵癌に対し全身化学療法に加えた局所療法としてHIFU治療をおこなった.症例は切除不能膵癌90例(Stage III 54例,IV 36例).HIFU装置はFEP-BY02(Yuande Bio-Medical Engineering, Beijing, China).Stage IIIとIVにおける治療効果を比較検討するとともに有害事象の有無を確認し臨床的認容性を評価した.
【結果】
有害事象は膵仮性嚢胞2例,膵炎1例,胃潰瘍1例,皮膚熱傷1例の5.6%の頻度で重篤なものは認めなかった.IIIとIV群の比較では平均治療回数2.6 vs 2.4回,平均治療時間2.2 vs 1.8時間,平均発射回数:2595 vs 1962発で両群間に有意差は認めなかった.完全腫瘍焼灼率87.0 vs 75.0%,疼痛緩和効果80.0 vs 68.2%,原発巣の治療効果はCR:0,PR:7,SD:38,PD:9 vs CR:0,PR:4,SD:18,PD:14,病勢制御率は83.3%vs 61.1%であった.診断後からのMSTは32.6 vs 16.1ヶ月(p<0.01,p=0.002)と有意にIII群で予後の延長が得られた.また化学療法+HIFU治療併用例90例と化学療法38例における診断後からのMSTの比較では26.7 vs 12.2ヶ月(p<0.001)と有意に併用例で予後の延長が得られた.
【結語】
HIFU治療は切除不能膵癌に対し新たな低侵襲治療のひとつとなりうる可能性が示唆された.
【今後の展開】
これらの結果をもとに,我々は新規開発のHIFU機器と腫瘍集積性の高い音響感受性抗癌剤を併用した音響力学的療法(SDT)を開発した.切除不能難治癌に対するSDTについても報告する.