Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 工学基礎
シンポジウム 工学基礎2 HIFUの臨床応用

(S179)

HIFUによる胎児治療

HIFU for fetal therapy

市塚 清健, 瀬尾 晃平, 松岡 隆, 仲村 将光, 高木 亮, 吉澤 晋, 梅村 晋一郎, 岡井 崇

Kiyotake ICHIZUKA, Kohei SEO, Ryu MATSUOKA, Masamitsu NAKAMURA, Ryo TAKAGI, Shin YOSHIZAWA, Shinichiro UMEMURA, Takashi OKAI

1東北大学大学院工学研究科通信工学, 2昭和大学病院産婦人科, 3愛育病院産婦人科, 4昭和大学横浜市北部病院産婦人科

1Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2Obstetrics and Gynecology, Showa University Hospital, 3Obstetrics and Gynecology, Aiiku Hospital, 4Obstetrics and Gynecology, Showa University Northern Yokohama Hospital

キーワード :

胎児治療を行う上で最も重要なことは母体及び胎児への安全性の配慮である.しかし,現行の胎児外科治療は母体腹壁及び子宮壁を通して胎児鏡をはじめとする医療機器を子宮腔内へ挿入する方法である.そのため,出血のリスクや破水,感染に引き続く早産のリスクが,胎児治療の成功の有無に関らず出生児の予後を左右することも少なからず存在する.また,胎盤が子宮前壁に存在する症例では医療機器の挿入が困難となるため治療が制限される場合がある.一方,HIFU照射は胎盤が前壁に存在しても同部位を超音波は透過するため胎盤の位置に左右されずに治療を行うことが出来る.HIFU照射は子宮内に医療器具を挿入しないため,従来法で問題となっている破水や感染などの出生児の予後を左右する合併症の併発を確実に避けることが出来る.すなわちHIFUの対象である胎児は超音波透過効率が良いこと,また胎児に非接触的に外科的治療が行いうる点でHIFUは胎児治療の一つの選択肢として期待される.HIFUの治療戦略としてはHIFUを用いて血流遮断を行うことによる胎児治療と組織焼灼による胎児治療の二つの戦略が想定できる.前者の好対象はTwin reversed arterial perfusion(TRAP)sequenceである.無心胎児と健康胎児(ポンプ児)の双胎間に存在する吻合血管により無心胎児が健康胎児より血流を供給されるため健康胎児は高拍出性心不全に陥る予後不良の1絨毛膜双胎児にみられる疾患である.HIFUを用いて無心胎児へ流入する血流を遮断することで治療が成立する.現行の治療はラジオ波を用いて同血流を遮断している.後者の治療対象として想定される疾患としては胎児胸水や腹水,胎児水腎症などの腔水症に対してHIFUを用いて組織焼灼し,瘻孔を作成し異常貯留水を羊水腔へ流出することで治療とする.現在は羊水腔へのシャント術が行われている.いずれも前述のごとく羊水腔へ医療器具の挿入が必須であり破水早産のリスクを伴う.
本シンポジウムではこれまで行ったTRAP sequenceの胎児治療症例を概観し,その問題や,その改善に向けた取り組み,およびその他応用可能な胎児治療に向けた基礎的研究について発表する.