Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 工学基礎
シンポジウム 工学基礎2 HIFUの臨床応用

(S179)

有痛性骨関節疾患に対するMRgFUS治療の疼痛緩和効果向上のための工夫

Enhancement of pain-relieving effect of MRgFUS therapy for painful bone and joint disease

川﨑 元敬, 南場 寛文, 泉 仁, 武政 龍一, 池内 昌彦, 牛田 享宏

Motohiro KAWASAKI, Hirofumi NAMBA, Masashi IZUMI, Ryuichi TAKEMASA, Masahiko IKEUCHI, Takahiro USHIDA

1高知大学医学部整形外科, 2愛知医科大学医学部学際的痛みセンター

1Department of Orthopaedic Surgery, Kochi Medical School, Kochi University, 2Multidisciplinary Pain Center, Aichi Medical University

キーワード :

【背景】
これまで我々は,痛みを伴う骨転移(BM),腰椎椎間関節症(腰OA),内側型変形性膝関節症(膝OA)に対するMRガイド下集束超音波(MRgFUS)治療の有効性について報告してきた.今回の目的は,本治療の効率化と有効性の向上のために,上記の各疾患に伴う圧痛部位を標的とした本治療による疼痛緩和効果を明らかにすることとした.
【対象と方法】
各疾患の病変部に圧痛(圧迫で誘発される痛み)を有し,最も強い痛みがNRS(numerical rating scale)スコアで4以上(0:痛みなし10:想像できる最大の痛み)の患者(BM:9例,腰OA:10例,膝OA:15例)を対象とした.治療は,MRIをガイドとしてExAblate system(InSightec社)を用い,BM群は転移巣の最大圧痛部位,腰OA群は圧痛を伴う2か所までの椎間関節の背側,膝OA群は膝関節内側の最大圧痛部位に,集束超音波治療を単回実施した.評価項目は,主観的な痛みの強度をNRSスコアにより治療後1週,1か月,3か月まで評価し,治療後1か月での治療奏功者(治療前の値の50%以上の疼痛減少)の割合を算出した.圧痛の評価は,アルゴメーターによる圧迫で痛みを感じる最小の圧迫力(圧痛閾値)を,病変部と健側で治療後3か月まで測定した.
【結果】
NRSスコアは,治療後1週から治療前より有意に低下し,BM群では治療後3か月まで低下傾向が持続した.治療奏功率は,BM群で89%,OA群で68%であった.圧痛閾値は,全疾患において,治療前は健側と比較して有意に低値であったが,治療後1週から治療前より有意に高値となった.治療奏功群では,治療後に圧痛閾値は有意に高値を示し,治療前の健側と同等になると共に,NRSスコアも著明に低下していた.
【考察と結論】
いずれの疾患においても,圧痛部位への限局した本治療により良好な疼痛緩和効果が得られた.骨転移の痛みは,転移巣自体が疼痛発生源であるため,痛みに敏感となっている圧痛部位への本治療が著効したと思われる.一方,関節症の痛みは,疼痛発生源が圧痛部位以外にもあるため,十分な治療効果が得られない場合があった.圧痛閾値の変化は,治療部位における神経線維の蛋白変性の程度を反映していると考えられ,各疾患の治療効果にも関与する可能性が示唆された.すなわち,有痛性の骨関節疾患に伴う圧痛の部位や程度を評価することは,MRgFUS治療における照射部位の決定や治療効果の判定にも有用であり,疼痛緩和効果の向上に貢献できると思われた.