Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 工学基礎
シンポジウム 工学基礎2 HIFUの臨床応用

(S178)

経頭蓋集束超音波 現在と未来

Transcranial Focused ultrasound, present and future

阿部 圭市, 山口 敏雄, 堀 大樹, 堀澤 士朗, 村垣 善浩, 堀 智勝, 川俣 貴一, 平 孝臣

Keiichi ABE, Toshio YAMAGUCHI, Hiroki HORI, Shirou HORISAWA, Yoshihiro MURAGAKI, Tomokatsu HORI, Takakazu KAWAMATA, Takaomi TAIRA

1東京女子医科大学脳神経外科, 2新百合ヶ丘総合病院放射線画像診断研究所, 3東京女子医科大学先端生命医科学研究所, 4東京脳神経センター病院脳神経外科

1Department of Neurosurgery, Tokyo Women’s Medical University, 2Reseach Institute for Medical Imaging, Shin-yurigaoka General Hospital, 3Faculty of Advanced Technology and Surgery, Institute of Advanced Biomedical, Tokyo Women’s Medical University, 4Department of Neurosurgery, Tokyo Neurological Center Hospital

キーワード :

経頭蓋MRIガイド下集束超音波治療(Transcranial MR-guide Focused Ultra Sound)はこれまで子宮筋腫や乳がん,癌の骨転移などに対して用いられてきた集束超音波治療と大きく違い,頭蓋骨と言う大きな障壁による超音波の減衰や散乱のため実現困難と考えられてきた.
だが最近の技術の進歩によりこの問題を克服し,頭蓋内に直径2-6mmの熱凝固巣を1mm程度の精度で作成できるようになり,またこの温度変化をリアルタイムにMRIでモニタすることで,可逆的試験加温が可能となった.このことにより,穿頭などの侵襲的処置を加えることなく,従来の定位視床凝固術,深部刺激療法などと同様の効果をもたらすことが可能となった.
本装置は1024個の超音波発生装置が直径30cmの半球体のヘルメットに配置され,その中心に超音波を集束させることにより高エネルギーが引き起こされる.頭部とヘルメットの間は無気泡水によって満たされ対象への超音波透過性が維持される.頭蓋骨による超音波反射,偏向などの影響はCTの骨画像により補正が行われる.これらの処置はすべてMRIガントリー内で行う.このCT,MRI画像と超音波の特性を組合せた新しいステージの機能神経外科治療が21世紀始まった.これまで脳神経外科学分野において,主に本態性振戦,強迫神経症,パーキンソン病に対する超音波治療が報告がされた.本邦において,本態性振戦に対する国内Feasibility study,国際Pivotal studyが行われ,現在国内Pivotal studyが行われている.2017年現在,本邦において局所性ジストニア,パーキンソン病,てんかんに対するStudyが開始された.
本治療は皮膚切開や穿頭を行わず,また放射線暴露も最小であるが,一方で従来の定位機能的脳神経外科学の技術である,高周波凝固手術,深部刺激療法,ガンマナイフ凝固術と同様の効果をもたらす可能性を示した.この治療は非手術的,非放射線暴露技術の実現性が示された.しかし一方で日本人における骨の問題により有効性に課題が残り,高周波凝固などとの違いが生じた.今回機能的脳神経外科の歴史の中で誕生した集束超音波治療,そして課題と工夫を示し,現在まで行われた治療を紹介し,Neurosonosurgeryの現在と未来を報告する.