Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 工学基礎
シンポジウム 工学基礎1 定量診断:何をみている?何が測れる?

(S176)

超音波tomography技術による複数生体情報の定量的取得

Ultrasound tomography for measuring multiple acoustic parameters

川畑 健一, 鈴木 敦郎, 山中 一宏, 坪田 悠史, 武 文晶, 寺田 崇秀, 丸岡 貴司

Kenichi KAWABATA, Atsuro SUZUKI, Kazuhiro YAMANAKA, Yushi TSUBOTA, Wenjing WU, Takahide TERADA, Takashi MARUOKA

株式会社日立製作所研究開発グループ

Research & Development Group, Hitachi, Ltd.

キーワード :

【緒言】
超音波エコー検査は,MRIやX線CTなど他のモダリティに比べて装置が小型・侵襲性が低く胎児への適用も可能という特長を持つ.さらに探触子を対象部位に押し当てるだけで簡便にリアルタイム撮像が可能であり,施術者がそのフィードバックを元に調整を行い,最適な撮像結果を得ることができる.ただし,このような簡便さは,術者依存性が高いという重大な欠点の源となっている.このような欠点を解消する一手法として,リング状に配置した超音波振動子アレイ中に対象を保持して360度全周で超音波送受を行う超音波トモグラフィー(US-CT)法がある.今回,高速かつ多指標を得ることを目標として平面波送受信をベースとするUS-CTプロトを製作し,画質および音響指標の取得に関する基礎検討を行った結果を基にUS-CTで得られる生体情報に関する報告を行う.
【実験方法】
今回製作したプロトタイプは,振動子アレイが中心周波数1.7 MHzのPZT素子を1024個配置した直径100mmのリング状であり,これをVerasnics社のVantage256を用いて超音波送受波を行った.また測定対象は音響特性を変化させたハイドロゲルおよびオイルゲル,ならびに摘出されたブタ乳腺である.
【結果と考察】
US-CTにおいては,対象から反射した超音波と対象を透過した超音波それぞれから異なった生体情報が得られる.まず反射波については,平面波送信にて波長以下の分解能を得るための条件設定を検討し,波長(1mm)の1/4の分解能を得ることができた.続いて透過波を用いた検討を行った.透過波については,平面波送信は高速な予備撮像用として用い,詳細な画像再構成には拡散波を用いた.なお,拡散波については,開口の最適化を行った.オイルゲルを用いた検討により測定対象の弾性率の違いを音速変化として,また粘性の違いを減衰率としてそれぞれ計測可能であることがわかった.さらに,反射波を用いた新規な音響特性計測として,反射波の強度の角度依存性を用いた組織境界の定量化の検討を行った.検討の結果,腫瘍の悪性度に関係することが分かっている組織境界粗さの定量的表示および微小石灰化強調イメージングが可能であることがわかった.以上のように,US-CTによって多種の生体情報が提示可能であることがわかった.これらの情報の総合的判断により,疾病リスクに関するより客観的な情報の取得が可能になることが期待される.