Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
特別企画(超音波検査士制度委員会主催) 認定超音波検査士取得のための報告書等作成時のポイントと注意点

(S166)

人工知能研究のための超音波レポーティングコンソールについて

Ultrasound Reporting Console for Artificial Intelligence Researches

中田 典生

Norio NAKATA

東京慈恵会医科大学超音波応用開発研究部

Division of Ultrasound Device Development and Application, The Jikei University, School of Medicine

キーワード :

2012年に人工知能研究の分野でコンピュータによる画像認識(Computer Vision)の技術革新が注目されるようになった.この技術革新はディープラーニング(深層学習)とよばれるニューラルネットワークを基盤とした機械学習が発展したアルゴリズム手法であり,数千枚から数万枚の教師付き(答えのある)画像が必要である.ディープラーニングは現在,画像認識,音声認識,自然言語処理に応用が始まっており,自動運転車での実用化を経て医療においては,放射線科,病理,皮膚科,眼科領域の画像診断への応用が始まっている.超音波においても,心臓,甲状腺,乳腺,腹部超音波検査における研究は実用化にむけて開発が世界中で急速に進められている.我々もディープラーニングの研究を進めるにあたり,膨大な超音波画像の教師付き画像データベースを作成するため,専用の超音波コンソールを作成したので報告する.コンソールは,通常の放射線科画像閲覧・レポーティングシステム(RIS: Radiology Information System)端末,DICOM画像出力用端末,医用画像処理用端末の3つから構成されている.RIS用ワークステーション(富士フィルムメディカル社製FRIS+Synapse),DICOM画像出力ソフトウェアにはArray社製AOC,医用画像処理用ソフトウェアはOsiriXを使用した.RIS端末は院内PACSと接続しており,5MBモニター2台,2MBモニター1台で超音波画像おとび読影レポートを表示させる.ディープラーニング用の画像データ抽出は,まずRIS端末で超音波画像および読影レポートを参照した後,DICOM画像をAOCにてDVDにDICOM形式のまま出力.次にDVDをApple Macintoshを使用してOsiriXに読み込ませて,匿名化処理や必要な画像の切り出しをしてJPEG画像として保存した.ディープラーニング,特に畳み込みニューラルネットワークによる画像認識では,適切な母集団の画像を入力すればどのような画像であっても幾何学的特徴があれば,画像認識が理論上可能である.従って,現在超音波検査で取得されている画像の診断的妥当性が,数学的(統計学的)に照明されるかどうかが解明され,画像診断として各種の超音波画像の有用性を客観的に評価できる点が重要と考えられる.一方超音波検査士や医師が作成する自然言語(書き下し文)には,人間が定義する言語の論理的曖昧さを完全に排除できないことから,特に超音波検査についてはコンピュータが理解可能な構造化レポート作成を推奨する研究者も多い.しかしながら構造化されていないレポートの自然言語処理(構造化への返還)は,現在画像認識分野ほどの進歩がみられず今後の技術革新が待たれる分野である.今回の発表では,超音波診断におけるディープラーニングの将来的展望を踏まえた上で読影レポートの方向性について検討した.