Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
特別企画 領域横断 プライマリ・ケアで役立つ体表臓器超音波診断と実践活用術

(S163)

総合診療科領域~総論およびリンパ関連疾患を中心に~

Introduction and ultrasonographic diagnosis of lymph related diseases for general physician

尾本 きよか

Kiyoka OMOTO

自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学1(臨床検査部)

Laboratory Medicine, Jichi Medical University, Saitama Medical Center

キーワード :

【1.はじめに】
プライマリ・ケアPCの現場では,画像検査のファーストチョイスとしてしばしば超音波検査USが用いられるが,その多くが腹部領域である.体表臓器(皮膚・皮下組織,甲状腺,唾液腺,リンパ節,神経,筋,血管など)の検査目的でUSを施行または依頼することは意外に少なく,視診・触診だけですませてしまう傾向にあるが,USを行なえば容易かつ正確に診断を下すことも可能になる.
体表臓器のUSを施行し,診断するにあたっては,使用する超音波装置,探触子の特性を知り,対象とする臓器や部位の解剖・組織学的知識の確認がきわめて大事である.ここでは,体表臓器超音波診断にあたっての基本的知識の整理とPCの日常臨床で頻回に遭遇するリンパ節腫脹,皮下浮腫をきたす病態の考え方,超音波診断の進め方について解説する.
【2.リンパ節腫脹をきたす疾患】
(1)頸部リンパ節炎
頸部には数100個のリンパ節があると言われ,常に鼻腔や口腔を介して細菌やウイルスなどに曝露されておりそれらから防御する役目を担っている.頸部リンパ節炎はリンパ節に炎症がおこり,痛みや腫脹を伴う場合をいい,小児では大部分が細菌やウイルス等の感染である.炎症による頸部リンパ節腫大は臨床経過により次のように分類される.
①急性・一側性:主に細菌感染による急性化膿性リンパ節炎
②急性・両側性:急性ウイルス感染症(EBウイルス,風疹等)
③亜急性・慢性:結核性リンパ節炎,猫ひっかき病など
(2)その他リンパ節腫脹をきたす疾患:転移性リンパ節,リンパ腫など
【3.浮腫をきたす病態・疾患】
【定義】
浮腫とは毛細血管内腔などから周囲の皮下組織に間質液が過剰に貯留した状態をいう.
【分類】
1.全身性
①腎疾患:ネフローゼ症候群など ②肝硬変 ③心不全
④その他:特発性,低栄養,甲状腺機能低下症(橋本病),悪性腫瘍ほか
2.局所性
(1)静脈性:深部静脈血栓症,静脈瘤
(2)炎症性:蜂窩織炎,うっ滞性皮膚炎,血管炎ほか
(3)リンパ性(=リンパ浮腫)
①一次性(原発性)リンパ浮腫:リンパ系の発育不全・形成不全など
②二次性(続発性)リンパ浮腫:乳癌,子宮癌のリンパ節廓清を含む手術や放射線治療によってリンパの流れが障害され生じる
(4)その他:血管神経浮腫(Quincke浮腫)
【超音波所見】
皮膚・皮下組織の肥厚,皮下脂肪層の輝度は上昇し,間質液貯留の程度に応じて脂肪組織層構造の不明瞭化,索状の無エコー域,ひび割れ様,敷石状の無エコー像を認める.
【方針】
特徴的超音波像から浮腫の診断は容易であるが,その原因は様々であり,その究明も並行して行う必要がある.