Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム 領域横断 検査士と医師が想像そして創造する未来像 ~検査士の役割はどう変わるのか,今後の教育制度を考える~

(S161)

腹部領域の超音波検査士の現状と問題点

Current status and problems of Registered Medical Sonographer (RMS) in the abdominal area

森 秀明

Hideaki MORI

杏林大学医学部第三内科

The Third Department of Internal Medicine, Kyorin University School of Medicine

キーワード :

腹部超音波検査は非侵襲的な検査であり,腹部領域の疾患が疑われる際は第一選択となる検査法である.超音波検査は主観的な検査法であり,施行者が最も多くの情報を把握しているため,本来であれば検査を施行した者が診断するのが理想である.しかしわが国では,日常臨床の場で行われている超音波検査の多くは臨床検査技師に委ねられており,医師は検査の報告書をみて,診断の一助にしている場合が多い.この場合,医師が超音波検査に精通していれば検査結果を正しく判断し正確な診断にたどり着くことが可能であるが,そうでない場合は報告書に曖昧な点があると誤診の原因になることがある.たとえば複数回の検査歴のある患者では前回の検査結果のみと比較して報告書を記載すると誤った結果を報告することがある.一例をあげると胆内に7mm大の隆起性病変があり,経過観察中に10mm大に増大した場合は要精査となることがあるが,実は7mm大と記載された検査より前の回に行われた検査時は9mm大であったといったことがある.
日本超音波医学会認定超音波検査士制度の領域は体表臓器,循環器,消化器,泌尿器,産婦人科,健診,血管の7領域からなっている.超音波検査士試験の問題点としては3年以上継続して本学会または日本超音波検査学会の会員であれば受験可能であるため,必ずしも十分な症例数を経験していなくても受験可能なこと,また試験自体があくまでも知識を問う試験であり実技試験がないため,試験に合格した技師が超音波検査を行うための基本的な知識を有していることは確認できても,実際に見落としのない検査が行えるかは判定できないことがあげられる.演者が超音波検査士に最も望むことは,資格を取ることが最終目標ではなく,その後,さらなる向上心をもって検査に携わってほしいという点である.具体的には超音波検査に必要な解剖や特有なアーチファクトを理解して検査を行い,見落としのない走査を行う様努力していく必要がある.また依頼医が何を知りたくて超音波検査をオーダーしたかを理解し,疾患に対する知識や病態を十分把握し,臨床的に有用な情報の提供できる超音波検査士に育つことを切に希望する.
現在,超音波検査士の資格を維持していくためには5年ごとに更新の手続きが必要である.更新に必要な学術集会や研究会などへの出席単位は25点と必ずしも高い点数ではないが,超音波検査士が知識を維持し,新しい技術の進歩に遅れないようにしていくためにも,可能な限り多くの学術集会や研究会に出席する必要がある.また今後は教育制度の見直しとして学術集会や研究会への出席以外に,更新に必要な講習会への参加の義務などについても検討していく必要があると思われる.
また日本超音波医学会では平成24年度から知識を問う試験以外に,実技試験や面接試験を加えた指導検査士試験が行われている.超音波検査士試験に合格した技師は,さらなる向上心を持って,指導検査士の資格に挑戦して頂きたい.
医療現場のニーズに応え超音波検査の信頼性を維持していくためには,健診~精査まで多くの検査に携わる技師が精度の高い検査を行うことが必要不可欠である.そのためには指導検査士や超音波検査士の資格を有する技師が検査室の中心的役割を担う必要がある.また施設によっては超音波検査を専門とする医師が不在なことも多いため,指導検査士や超音波検査士の資格を有する技師は後進の技師の育成に情熱を持って取り組んで頂きたい.