Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム 領域横断 検査士と医師が想像そして創造する未来像 ~検査士の役割はどう変わるのか,今後の教育制度を考える~

(S160)

超音波検査の精度保証を支える教育ステップを構築する

Establish an education step to support accuracy guarantee of ultrasonic examination

関根 智紀

Tomoki SEKINE

総合病院国保旭中央病院診療技術局

Department of Laboratory, Asahi General Hospital

キーワード :

【はじめに】
現在,超音波検査の果たす役割は大きく,その多くが超音波検査士の手に委ねられている.超音波検査士とは日本超音波医学会が認定する技師(延数22834名,2016.12.31)である.
今回,検査士と医師が想像そして創造する未来像のもと,検査士をどのように育成するかの教育システムについて述べてみたい.
【超音波検査技師の役割】
技師は技術の提供をプロフェショナルとして,その役割は臨床医の疑問に応えるレポートへの展開,すなわち臨床医は何か異常や疾患を疑いあるいは否定したく検査を依頼してきているので,①その疑問に応える検査を進め,②疾患の有無のみならず,その程度や治療方針の情報提供となり,そのための知識と技術が必須となる.実際の臨床の現場では,技師の力量,技師と医師のコミュニケーションが無ければ容易ではない課題である.
【超音波検査士制度の受験資格と更新】
超音波検査士の試験では,専門的な超音波の原理と臨床医学の知識が求められ,毎年多くの優秀な検査士を輩出している.その技術に関しては,学会や各施設において検査の精度に関する研究や教育が推し進められおり,一定の成績および社会的な評価も得ている.ただし,近年の超音波検査・医学の発展は急激に進んできており,超音波検査士には試験の成績だけではなく,技術と豊富な医学知識,そして臨床側との密な連携を構築できる応用能力が求められている.現在,超音波医学会が提供するライセンスの受験資格(日超医認定資格制度規則)をみると,『専門医』は5年以上の会員歴,指定される専門医研修施設で超音波専門医研修カリキュラムに準じて通算5年以上の超音波研修,筆頭者として5篇以上の超音波医学に関する学会発表か論文発表,研修施設において500例以上の超音波診療,30例以上の手術・剖検・その他確定診断結果との対比検討が必須である.一方『指導検査士(腹部)』は13年以上の腹部超音波検査の実務経験,消化器ライセンスの2回以上の更新,指導医あるいは代議員(M系)の推薦となっている.また『認定検査士』は3年以上の会員歴と専門医の推薦が必要である.なお,資格更新は学会参加等による点数取得であり講習や再度の試験は無い.
【今後の教育体制と両学会の協力体制】
最近の超音波検査は,これまで以上に検査手技の向上と情報の確実性さらに超音波検査でなければの有用性が求められている.超音波検査士に求められる役割は重要であり,単に試験成績の合否だけでなく,資格取得の前後の教育制度の構築が必須と考える.受験前の教育制度は,専門医では受験資格のもとに構築されているが,検査士には乏しい状況である.資格取得後の教育制度は,学会参加等による点数取得のみであるが,検査士取得後に時間が経過しても,①技術と知識を一定レベル維持できる,②最新の知識や高度な技術を習得できる,③後進の指導ができる,などそれぞれの環境や目標に合った研修が受けられるような教育システムが構築されることを期待する.さらにそのシステムのもとに,目標達成の到達度が確認でき,
各自のライセンスの更新が体系的かつ確実に進められることが望ましい.
【まとめ】
信頼度の高い超音波検査士の輩出と技能の維持・向上のためには教育制度の構築が大切である.これは,一個人レベルでは困難であり,学会全体で取り組む問題と考える.教育の環境,技術の習得,求める・提供する検査内容にも時代の変遷がある.超音波検査士の教育制度は,日本超音波医学会と超音波検査学会の密な連携のもと,学会レベルで慎重に協議し,速やかに導入すべき局面を迎えている.