Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
健診

(S864)

超音波検査が診断に有用であった褥瘡の一例

A Case of Ultrasonography was Useful in Diagnosis of the Decubitus

新嶋 綾1, 時野谷 美夏2, 菱田 千枝2, 木幡 篤1, 伊藤 周作3, 中島 光太郎4

Aya NIIJIMA1, Mika TOKINOYA2, Chie HISHIDA2, Atsushi KIHATA1, Syuusaku ITOU3, Koutarou NAKAJIMA4

1株式会社日立製作所日立総合病院放射線技術科, 2株式会社日立製作所日立総合病院看護局, 3株式会社日立製作所日立総合病院皮膚科, 4株式会社日立製作所日立総合病院放射線診療科

1Radiation Technology, Hitachi Ltd. Hitachi General Hospital, 2Nursing, Hitachi Ltd. Hitachi General Hospital, 3Dermatology, Hitachi Ltd. Hitachi General Hospital, 4Radiation Clinical, Hitachi Ltd. Hitachi General Hospital

キーワード :

【背景】
褥瘡とは圧迫の力やズレの力が皮膚にかかり組織が虚血状態になった結果,虚血部が壊死に至ることにより生じる損傷のことをいい,褥瘡を重篤化させないためには悪化リスクの高い褥瘡の見極めと適切な処置が重要となる.褥瘡超音波検査の目的は,視触診では診断し得ない急性期の深部組織損傷(Deep Tissue Injury; DTI)の存在診断や皮下損傷の広がりや深さをリアルタイムに評価することである.今回,PETにて殿部に高度集積を認めた褥瘡の一例を経験したので報告する.
【症例】
90歳,男性.
【現病歴】
2015年9月に骨髄異形成症候群(以下MDS)が疑われ,経過観察中に不明熱が出現,PET検査にてびまん性の骨髄集積と右肺上葉の高度な異常集積増加,さらに左殿部に高度の異常集積増加を伴う軟部組織濃度増生を認めた.MDSおよび肺炎と診断された.また殿部に活動性の褥瘡を疑われ,深部膿瘍形成や直腸との瘻孔形成が示唆されたため,精査目的に超音波検査を施行した.
【超音波検査所見】
Bモードで皮下組織の不明瞭化と低エコー域,脂肪組織の浮腫性肥厚を認め,DESIGN-R®分類の深さD3に相当する表皮〜脂肪組織までの皮下組織損傷が疑われた.また,ドプラモードで急性期の毛細血管拡張および肉芽形成時の新生血管に起因した著明な血流増加を認めた.膿瘍形成や瘻孔形成は否定的であり,PETで見られた殿部の高度集積は褥瘡の新生血管による著明な血流増加を反映していると考えられた.
【経過】
PET検査後7日目のCT検査にて軟部組織濃度増生は軽快傾向であり,膿瘍形成を示唆する液体貯留も認めなかった.一方肺炎は増悪傾向であり,不明熱の原因は肺炎によるものと診断された.14日目に再度超音波検査を施行し,皮下組織の層構造の明瞭化と血流信号の消失を確認し,瘢痕治癒が示唆された.褥瘡はその後も注意深い経過観察と適切な処置を行い寛解傾向である.
【まとめ】
PET検査にて褥瘡を疑われた一例を経験した.他のモダリティに褥瘡超音波検査を加えることで,より信頼性の高い診断が可能となると思われた.また,ドプラモードによる血流信号の観察は褥瘡の治癒過程を評価する上で有用であると考えられた.