Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
血管

(S860)

診断および治療効果の経時的観察に,腹部超音波検査が有用であった後腹膜線維症の2例

Two cases of Retroperitoneal Fibrosis diagnosed and observed with Abdominal Ultrasound

廣井 麻子1, 高松 墨子1, 林 かんな1, 松本 実佳2, 濱 典男3, 瓦林 孝彦2, 川住 勇1, 竹浦 久司4

Asako HIROI1, Sumiko TAKAMATSU1, Kanna HAYASHI1, Mika MATSUMOTO2, Norio HAMA3, Takahiko KAWARABAYASHI2, Isamu KAWASUMI1, Hisashi TAKEURA4

1社会医療法人きつこう会多根総合病院中央検査部, 2社会医療法人きつこう会多根総合病院循環器内科, 3社会医療法人きつこう会多根総合病院総合内科, 4社会医療法人きつこう会多根総合病院医療技術部

1Central Clinical Laboratory, Tane General Hospital, 2Cardiovascular Medicine, Tane General Hospital, 3Internal Medicine, Tane General Hospital, 4Medical Engineering Department, Tane General Hospital

キーワード :

【症例1】
41歳男性.2週間前から続く腰痛にて,他院整形外科にて加療されていたが症状改善せず,左側腹部痛も出現し当院内科受診となった.血液検査所見にてWBC 5500/ul, CRP 2.48mg/dl,血沈34/52 mm(60 / 120 min.)と炎症反応の軽度上昇認め,IgG4は74 mg/dlと基準範囲であった.
腹部超音波検査では,腎動脈分岐足側から左右内外腸骨動脈分岐手前までの範囲で,大動脈のほぼ全周沿うような低エコー領域を認めた.血流は検出しなかった.下腸間膜動脈を巻き込んでいたが,血流シグナルは良好であった.また左腎は腫大し中等度の水腎症を呈していた.
腹部造影CTにて,腹部大動脈から総腸骨動脈分岐部にかけて大動脈周囲に軟部陰影認め,その軟部陰影は仙骨前から骨盤底の後腹膜に達し,同部位にdelayed enhance像を認めた.また左水腎症も認めた.大動脈壁の肥厚は認められなかった.
Gaシンチにて腹部大動脈周囲から仙骨前面にかけてみられる軟部陰影に一致するGaの集積を認めた.
後腹膜線維症と診断し,プレドニゾロン60 mg / dayより投与開始したところ腰腹部痛は改善し,画像所見の後腹膜病変部は縮小を認め水腎症も消失した.
【症例2】
58歳男性.腰背部痛を主訴に救急外来受診.血液検査にてWBC 9000/ul, CRP 0.12mg/dl,血沈17 / 33 mm(60 / 120 min.),また,IgG4は235 mg/dlと高値を示した.
腹部超音波検査では,腎動脈分岐足側から右総腸骨動脈までの範囲で動脈周囲の左側半周に均一な低エコー領域を認めた.内部は均一で血流は認めなかった.
腹部造影CTでは,腹部大動脈腎動脈分岐部より右総腸骨動脈にかけて周囲に軟部組織認め,同部位にdelayed enhance像を認めた.
後腹膜線維症と診断し,プレドニゾロン40 mg / dayより投与開始した.腰背部痛は徐々に消失し,腹部CT,腹部超音波検査にて病変部の縮小が確認できた.
【まとめ】
後腹膜線維症は,腹部大動脈や腸骨動脈,尿管の周囲に炎症細胞浸潤や線維組織が形成される疾患である.近年,特発性後腹膜線維症の中にIgG4関連のものが含まれていることが明らかになったが,その割合や頻度については報告によって大きく異なるうえ,臨床経過や治療反応性,予後などIgG4関連と非関連の差についてはいまだ不明な点が多い.また,炎症性大動脈瘤や大動脈周囲炎との疾患概念に明確な線引きがないため診断に苦慮することもしばしばである.今回,腹部超音波検査は,後腹膜線維症の診断のみならず,非侵襲的で繰り返し施行でき,経時的変化の推移を検討する上でも有用な検査法であった.腹部超音波検査にて経時的変化を追えた2症例の後腹膜線維症を経験したので文献的考察を加えて報告する.