Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
血管

(S858)

側頭動脈にコークスクリューサインを認めた木村病の一例

Corkscrew sign of temporal artery in Kimura’s disease: a case raport

井口 純子, 木村 和広, 南澤 匡俊, 山崎 佐枝子, 元木 博彦, 岡田 綾子, 伊澤 淳, 小山 潤, 池田 宇一

Junko IGUCHI, Kazuhiro KIMURA, Msaoshi MINAMISAWA, Saeko YAMAZAKI, Hirohiko MOTOKI, Ayako OKADA, Atsushi IZAWA, Jun KOYAMA, Uichi IKEDA

信州大学医学部循環器内科教室

Department of Cardiovascular Medicin, Sinshu University Graduate School of Medicine

キーワード :

木村病は,全身の軟部組織,特に顔面部に無痛性腫瘤を形成し,末梢好酸球及び,IgEの増加をみる原因不明の比較的稀な疾患である.認知度は非常に低いが,木村病の中には,バージャー病様の血管炎を呈する表現型が存在する.今回我々は,木村病に伴う血管病変を認めた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は,53歳男性.2014年夏ごろに喘息様症状が悪化し,この時の血液検査にて白血球17000,好酸球60%と好酸球の増多を認めた.また左そけい部リンパ節の腫脹を指摘され,リンパ節生検が施行された.病理所見では,悪性所見は認めず濾胞間に好酸球の浸潤を認めた.その後経過観察されていたが,2015年5月より下腿浮腫・全身倦怠感を認めるようになった.血清アルブミン1.1g/dl,尿中蛋白クレアチニン比13.2g/g,総蛋白360mg/dlからネフローゼ症候群と診断された.血清IgEは7522mg/dlと著明に上昇し,腎生検では,膜性腎症の初期像を呈していたが,間質に巣状に浮腫像と著明な好酸球浸潤を認めた.両側側頭動脈に拍動を伴う蛇行した怒張を認め,何らかの血管炎が疑われ,血管超音波検査を施行された.血管超音波検査では,側頭動脈はコークスクリューサイン様で,血栓を疑う所見を認めた.また,血管壁は肥厚し境界不明瞭であった.同部位の生検が施行され,病理所見では,内腔はほぼ血栓で占められ,また血栓内は,好酸球の浸潤が著明で,その他リンパ球や組織球を含んでいた.好酸球を主体とした細胞浸潤は,動脈壁内から外膜に及んでいた.以上の結果から,リンパ節生検の結果と合わせて,木村病と診断された.少ないながらも,木村病でバージャー病に酷似した血管病変を伴うという報告がされている.当院では,以前にも,バージャー病が疑われていたものの,リンパ節生検などから木村病と診断された症例を経験している.コークスクリューサインが観察された場合には,バージャー病だけではなく,木村病も鑑別にあげ検査施行する必要があると思われた.血管超音波検査は,非侵襲的でスクリーニング検査として有用である.