Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
甲状腺

(S834)

超音波検査で術前に指摘可能であった甲状腺未分化癌の1例

A case of the thyroidal anaplastic carcinoma which I was able to point out before an operation by sonography

西村 はるみ1, 2, 王子 史恵1, 2, 金井 敏晴3

Harumi NISHIMURA1, 2, Fumie OJI1, 2, Toshiharu KANAI3

1JA長野厚生連北アルプス医療センターあづみ病院診療放射線科, 2金沢大学大学院医薬保健学総合研究科保健学専攻, 3信州大学医学部附属病院乳腺・内分泌外科

1Department of Radiology, North Alps Medical Center Azumi Hospital, 2School of Health Sciences, College of Medical, Pharmaceutical and Health Sciences, Kanazawa University, 3Department of Surgery, Shinsyu University

キーワード :

【はじめに】
甲状腺未分化癌は全甲状腺癌に占める割合は1〜2%と少ないが,固形癌の中でも最も予後不良な癌とされている.未分化癌の発生原因としては,長い経過を持つ分化癌(乳頭癌や濾胞癌)から突然未分化転化して生じると考えられている.当院において超音波検査(以下US)にて術前に未分化癌と診断しえた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例】
症例は60歳代,女性.突然の嗄声が出現し当院耳鼻科を受診した.既往歴に特記すべきものはなし.
【US】
甲状腺右葉に大きな低エコー腫瘤を認めた.形状は不整,境界は不明瞭粗雑,内部エコーは不均質であり,粗大高エコーが多発していた.
【血液検査】
抗サイログロブリン抗体陽性,抗TPO抗体陽性であり,慢性甲状腺炎も疑われた.
【CT】
甲状腺両葉の腫大および濃度低下を認め,慢性甲状腺炎が疑われた.甲状腺右葉優位に腫大し,気管は左方に圧排され,狭窄していたが腫大によるものとの診断であった.
【手術】
同月中に甲状腺全摘+頚部郭清+気管切開術が施行され,その後,放射線治療(頚部外照射65Gy)され,現在経過観察中である.
【考察】
甲状腺未分化癌は固形癌の中で最も予後不良な癌とされているが,全甲状腺癌に占める割合は1〜2%と少ない.60〜70歳代に多く発症する(平均年齢64歳).甲状腺腫瘍は硬く,最大径が5cm以上と大きなものが多く,一見腺腫様甲状腺腫や橋本病と勘違いされている場合も少なくない.しかし,未分化癌はすでに甲状腺外に浸潤しているものが大半である.本症例を振り返るとUSでは,甲状腺右葉に形状不整,境界不明瞭粗雑,内部エコー不均質な大きな腫瘤を認めた.乳頭癌のような微細高エコーではなく,粗大高エコー(大きく濃い,かつ非定形)が多発していた.周囲臓器との境界が不明瞭であり,浸潤が疑われる所見であった.US画像診断と突然の嗄声といった臨床症状から未分化癌を疑うことができた症例であった.