Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 その他②

(S812)

保存的に軽快した門脈ガス血症・腸壁内ガス・腹腔内遊離ガスを伴った虚血性腸炎の1例

A case of small bowel ischemia with portal vein gas, pneumatosis intestinalis, and intra-abdominal free air with conservative resolution

深田 浩志1, 湯浅 典博1, 小島 祐毅1, 2, 前岡 悦子1, 2

Koji FUKATA1, Hironori YUASA1, Yuki KOJIMA1, 2, Etsuko MAEOKA1, 2

1名古屋第一赤十字病院消化器外科, 2名古屋第一赤十字病院検査部

1Department of Gastrointestinal Surgery, Japanese Red Cross Nagoya Daiichi Hospital, 2Test Department, Japanese Red Cross Nagoya Daiichi Hospital

キーワード :

症例は88歳女性で,既往に高血圧,心筋梗塞がある.2015年12月,1週間の便秘の後,腹部膨満,嘔吐を主訴に当院を受診した.来院時,バイタルサインは安定していたが腹部は膨隆し,全体に軽度の圧痛を認めた.血液検査ではCRP 1.18,WBC 10000,Hb 11.9と軽度の炎症所見を認めた.CTでは小腸が著明に拡張し,下部小腸に広範に壁内ガスを認め,門脈内ガス,肝周囲の腹水とその中のfree airを認めた.下部小腸はSMVを中心に反時計回りにねじれSMVは狭窄していた.その6時間後のUSでは,門脈ガスの所見を認め,右側腹部拡張腸管の壁構造は不明瞭で,カラードプラ法では小腸壁に拍動性シグナルを検出できなかった.ソナゾイド®を用いて造影USを起こったところ,右側腹部拡張腸管壁内への造影剤の流入は非拡張小腸よりも著しく遅延していた.絞扼性イレウスによる腸管虚血と診断したが,高齢,併存症,予想される手術(大量小腸切除が必要になる可能性)を考慮して,開腹手術の適応としなかった.
来院24時間後,バイタルサインは安定し,腹痛は軽快した.来院3日後のCTで小腸壁内ガス・門脈内ガス・SMVの狭窄所見も軽減していたので,来院8日目から経口摂取を開始した.来院16日目の現在,入院中だが近く退院を予定している.
自験例は便秘を誘引として下部小腸の絞扼,循環障害をきたし,腸壁内ガス・門脈内ガス・腹水・free airを合併したが,比較的短時間に絞扼が自然に解除されたため腸壁が壊死に陥らなかったと考えられる.