Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
消化器 肝腫瘍②

(S806)

膵臓原発性悪性リンパ腫の1例

A case of primary pancreatic lymphoma

山尾 雅美1, 西尾 進1, 平田 有紀奈1, 鳥居 裕太1, 岩本 誠司2, 六車 直樹3, 山田 博胤1, 佐田 政隆1, 藤崎 由紀子4, 渡辺 滋夫5

Masami YAMAO1, Susumu NISHIO1, Yukina HIRATA1, Yuta TORII1, Seiji IWAMOTO2, Naoki MUGURUMA3, Hirotsugu YAMADA1, Masataka SATA1, Yukiko FUJISAKI4, Shigeo WATANABE5

1徳島大学病院超音波センター, 2徳島大学病院放射線科, 3徳島大学病院消化器内科, 4徳島市民病院検査科, 5徳島市民病院血液内科

1Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital, 2Department of Radiology, Tokushima University Hospital, 3Department of Gastroenterology, Tokushima University Hospital, 4Department of Clinical Laboratory, Tokushima Municipal Hospital, 5Department of Hematology, Tokushima Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
リンパ節以外に発生する節外性悪性リンパ腫は稀ではない.正常のリンパ網内系は全身に存在るため,リンパ系腫瘍の発生母地は全身に存在する.したがって,いずれの臓器からでも節外性悪性リンパ腫は発生しうる.膵原発悪性リンパ腫の発生頻度は,膵悪性腫瘍の0.5%以下,節外性悪性リンパ腫の1%以下と言われ,稀な疾患である.今回我々は,膵体尾部原発と考えられる悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.
【症例】
46歳.女性.
【主訴】
左季肋部不快感.
【現病歴】
20XX年4月頃より左季肋部不快感が出現し,改善しないため近医を受診された.腹部腫瘤を触知したため,腹部CT検査が施行され,膵腫瘤を指摘された.精査目的で当院消化器外科に紹介となった.
【身体所見】
身長:156cm,体重:43kg,体温:36.5℃,血圧:105/59mmHg,心拍:89/min,腹部平坦・軟,肝脾腫なし,結膜黄疸なし,左季肋部に腫瘤を触知.
【ラボデータ】
WBC:9.2×10×3/μl,RBC:3.46×10×6/μl,Hb:7.0 mg/dl,PT:15.9秒,FIB:983mg/dl,ALB:3.1g/dl,AMY:195U/l,P-AMY:171U/l,空腹時血糖:94mg/dl,HbA1c:6.6%,CRP:8.7mg/dl,CEA:2.6ng/ml,CA19-9:<1U/ml,可溶性IL2レセプター:3320 U/ml
【腹部超音波検査】
膵体尾部にエコーレベルが極めて低く,不均一な腫瘤を認めた.腫瘤サイズ:約10×7cm大.境界:比較的明瞭平滑,形状:不整,血流:比較的豊富に認めた.腫瘤内には,腹腔動脈などの膵周囲血管が貫通していたが,明らかな狭窄は指摘できなかった.また,腫瘤は左腎,脾臓および胃体部に接していたが,境界は保たれており,直接浸潤は否定的であった.腫瘤周囲には,球形や楕円形,不整形な低エコー結節を累々と認め,第一に悪性リンパ腫を疑う像であった.
【腹部CTおよびMRI検査】
膵体尾部の腫瘤内部は均一で,腫瘤内には血管が貫通していた.血管の狭小化や閉塞はなかった.
【PET-CT検査】
膵体尾部を主とした腫瘤への比較的均一なFDGの集積を認めた.また,傍腹部大動脈,骨盤内に多発した結節にも集積を認めた.
【臨床経過】
画像検査より悪性リンパ腫が最も疑われ,血液検査でも可溶性IL2レセプターが3320 U/mlと著明に上昇していた.確定診断のため,開腹下に膵腫瘤の切除生検が施行された.術中迅速細胞診では,異型リンパ節と考える大型で不整な核の結合性のない細胞の集簇を認め,悪性リンパ腫として矛盾なかった.免疫染色でもCD20+,CD79a+,CD10+であり,病理組織学的検査もdiffuse large B cell lymphomaと診断された.現在,他院血液内科へ転院され,化学療法(R -CHOP療法)で治療中である.6コース終了し,膵腫瘤は著明に縮小している.
【考察】
一般に,節外性悪性リンパ腫は,原発臓器および所属リンパ節に限局することが多く,放射線治療,化学療法によく反応することより,予後は良いとされている.膵原発悪性リンパ腫に関する報告は極めて稀で,浸潤性膵管癌の所見と類似する点もあり,診断に苦慮することも少なくない.臨床症状は上腹部痛が多く,その他体重減少や発熱がみられる.腫瘤径が約6cmと大きい状態で発見されることが多い.膵頭部に腫瘤を認める場合でも閉塞性黄疸を伴わない例が多く,主膵管の拡張や周囲血管への浸潤を認めないことが多い点は浸潤性膵管癌と鑑別する上で重要となる.黄疸や周囲血管への浸潤を伴わない巨大な膵腫瘤に対しては膵臓悪性リンパ腫の可能性を念頭に置き鑑別を進めるべきであると考えた.