Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
循環器 循環器⑥

(S792)

弁狭窄をきたした大動脈位生体弁心内膜炎の一例

A Case of Endocarditis of Prosthetic Valve in the Aortic Position

谷 久弥子1, 穂積 健之2, 波元 智香1, 野口 麻友美1, 有馬 隆幸1, 窪田 優子3, 青山 孝信3, 平居 秀和3

Kumiko TANI1, Takeshi HODUMI2, Chika NAMIMOTO1, Mayumi NOGUCHI1, Takayuki ARIMA1, Yuuko KUBOTA3, Takanobu AOYAMA3, Hidekazu HIRAI3

1大阪府済生会野江病院臨床検査科, 2和歌山県立医科大学循環器画像動態診断学, 3大阪府済生会野江病院心臓血管外科

1Department of Clinical Laboratory, Osaka Saiseikai Noe Hospital, 2Cardiovascular Image Dynamics Diagnostics, Wakayama Medical University, 3Department of Cardiovascular Surgery, Osaka Saiseikai Noe Hospital

キーワード :

【症例】
70歳代女性.大動脈弁狭窄症に対し大動脈弁置換術(生体弁)が施行された.術後の経胸壁心エコー図では,人工弁最高血流速は1.9m/s,平均圧較差7mmHg,大動脈弁位生体弁に明らかな疣贅所見および弁周囲逆流は認められず,経過良好で退院となった.2ヶ月後,意識障害・左半身不全麻痺を認め,他院へ救急搬送となり急性期脳梗塞と診断されたが,治療中に発熱を認めた為,人工弁感染性心内膜炎の疑いにて当院転院となった.転院時の血圧106/72mmHg,脈拍73/分・整,体温37.0℃,意識傾眠,左半身不全麻痺,心音整,2RSBにLevineⅢ/Ⅳの駆出性収縮期雑音が聴取された.血液検査ではCRPの上昇と軽度貧血が認められた.経胸壁心エコー図では,大動脈弁位生体弁の肥厚・開放制限が認められ,人工弁最高血流速は5.1m/s,平均圧較差64mmHgであった.人工弁機能不全が疑われ,経食道心エコー図も施行された.大動脈弁位生体弁は三尖ともに肥厚し,弁尖の開放制限を認めたが,明らかな疣贅の同定は困難であった.また弁周囲逆流や弁輪部膿瘍は認められず,僧帽弁に明らかな異常所見は認められなかった.血液培養検査にてstereptcoccus viridansが検出され,人工弁感染の診断にて,抗生剤治療が行われた.しかし,新たな脳梗塞所見がみられたため,再手術となった.手術所見では,生体弁の左室側に疣贅が付着し,それによって弁の可動性が制限されていることが確認された.
【考察】
人工弁感染性心内膜炎の心エコー図所見としては,疣贅,人工弁周囲逆流,弁輪部膿瘍などが一般的である.一方,本例のように,人工弁狭窄をきたす例も稀ながら存在する.生体弁で感染を伴う場合,弁尖の肥厚・可動制限,人工弁最大血流速の上昇があれば,本症の可能性も考えることが,診断上,重要であると考えられる.
【結語】
経胸壁心エコー図にて弁狭窄所見のみを呈した大動脈弁位生体弁感染の一例を経験したので報告する.