Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般ポスター
循環器 循環器①

(S777)

非感染性血栓性心内膜炎の一例

A case of nonbacterial thrombotic endocarditis

宮本 ゆかり1, 井波 準治1, 杉浦 菜摘1, 藤原 佳子1, 安居 由香1, 坂森 和美1, 小竹 悠理香2, 野木 信平2, 二井 理恵2, 下山 寿2

Yukari MIYAMOTO1, Jyunji INAMI1, Natsumi SUGIURA1, Yoshiko FUJIWARA1, Yuka YASUI1, Kazumi SKAMORI1, Yurika KOTAKE2, Shinpei NOGI2, Rie FUTAI2, Hisashi SHIMOYAMA2

1市立伊丹病院医療技術部, 2市立伊丹病院循環器内科

1Department of Cardiovascular Echolaboratory, Itami City Hospital, 2Department of Cardiology, Itami City Hospital

キーワード :

【症例】
67歳女性
【主訴】
呼吸苦
【現病歴】
2013年左肺腺癌に対して左肺下葉切除術施行.2015年8月脳梗塞発症,下肢静脈血栓症を合併.ワルファリンによる抗凝固療法を受けていた.同年10月より呼吸苦出現.胸部レントゲンにて左大量胸水貯留を認め,精査目的にて当院紹介受診.
【経過】
胸水に対し胸腔穿刺・ドレナージを施行.細胞診にて腺癌の腫瘍細胞を認め肺癌再発と診断した.頭部MRIで多発性脳梗塞,超音波検査にて両下肢静脈血栓を認めたが,胸部造影CTでは肺血栓塞栓症は認めなかった.心機能評価および塞栓源検索目的にて施行した心臓超音波検査では,左室収縮能正常であり心房,心室に血栓は描出されなかった.奇異性脳塞栓症の原因となるようなシャントも認めなかったが僧帽弁両尖に高度僧帽弁逆流を伴う疣腫(前尖12×9mm,後尖10×5mm)を認めた.発熱なく血液培養結果は陰性であったため非感染性血栓性心内膜炎を疑い第7病日ワルファリン中止,ヘパリン投与開始した.WBC,CRPともに軽度炎症反応を認めたため抗生剤も併用したが副作用のため第29病日中止した.ヘパリン治療開始約一週間後(第16病日)の心臓超音波検査にて僧帽弁両尖の疣腫の縮小は認められなかったためヘパリンを増量した.第23病日に施行した心臓超音波検査にて僧帽弁両尖の疣腫の縮小(前尖9×7mm,後尖7×6mm)を認め,第30病日には僧帽弁両尖の疣腫はさらに縮小(前尖6×4mm,後尖ほぼ消失)し,僧帽弁逆流も軽度認めるのみに改善を認めた.血液培養を繰り返し行ったがすべて陰性であった.ゲフィチニブ投与にて癌性胸水コントロールされており,退院を目指してヘパリンをXa阻害薬であるエドキサバンに変更したが疣腫の増悪を認めなかった.
【考察】
今回我々は僧帽弁両尖に高度僧帽弁逆流を伴う疣腫を認めた一例を経験した.鑑別として第一に感染性心内膜炎があげられるが発熱はなく,血液培養は陰性であったこと.基礎疾患として深部静脈血栓症,多発脳梗塞を合併した肺腺癌がありヘパリン増量とともに疣腫の縮小と僧帽弁逆流の改善を認めたことより非感染性血栓性心内膜炎と考えた.