Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
運動器 運動器②

(S749)

下肢腱付着部腱肥厚とX線大靭帯骨棘の発現率

Thickness and prevalence of the radiographic large enthesophytes in the entheseal insertions of Japanese lower limbs

加茂 健太1, 城戸 聡1, 河内 奈々子2, 西野 聖吾3, 松田 夕子3, 川島 朝子3, 田中 雄一3

Kenta KAMO1, Satoshi KIDO1, Nanako KOHCHI2, Seigo NISHINO3, Yuko MATSUDA3, Asako KAWASHIMA3, Yuichi TANAKA3

1山口赤十字病院整形外科, 2山口赤十字病院リハビリテーション, 3山口赤十字病院検査部

1Orthopaedics Surgery, Yamaguchi Red Cross Hospital, 2Rehabilitation, Yamaguchi Red Cross Hospital, 3Clinical Ezamination, Yamaguchi Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
踵骨部の大靭帯骨棘(large spur)は,脊椎関節炎(慢性)の特徴的所見とされるr).しかし,靭帯骨棘は加齢性変化でもあり,関節リウマチなどの足部変形においても高率に見られる.踵骨部腱付着部炎に関しては,スポーツ分野に加え,リウマチ学分野からの報告も多いr).アキレス腱部靭帯骨棘は48%,足底部靭帯骨棘は55%と報告されている(Menz).アキレス腱部・足底部両者に認める頻度は11%と報告されているToumi.靭帯骨棘の病態は炎症性ではなく変性とされるが不明な点も多く,疾患特異性もはっきりしないr).膝におけるX線靭帯骨棘のは,健常者において,19%と報告されている.本調査では,下肢腱付着部の腱肥厚とX線靭帯骨棘発現率と疾患特異性を明らかにすることを目的とした.
【対象・方法】
2014年6月から2015年5月,関節リウマチ,脊椎関節炎が疑われ,当科受診した未診断患者の中で,両膝,両足関節の単純X線検査,下肢腱付着部の超音波検査が施行された65名(650部位)を対象とした.関節リウマチ群はEULARの分類基準,脊椎関節炎はAmor,ASAS,ESSGのいずれかを満たした群,踵骨部腱付着部炎群(アキレス腱付着部炎および足底腱膜炎)とその他群の4群に分けた.その他群では,リウマチ性多発筋痛症,SLEなど膠原病を除き,SpAの診断に至らなかったクローン病患者,潰瘍性大腸炎患者,乾癬患者を除いた.
X線靭帯骨棘は発現の有無,大きさで分類した.大きさは大,小,無しに分けた.大靭帯骨棘は膝蓋骨,脛骨および踵骨と靭帯骨棘の深層側の外縁が鋭角のものと定義した.
【結果】
平均年齢55.7歳,男性18名,女性47名だった.脊椎関節炎群12名(120部位),関節リウマチ群12名(120部位),踵骨部付着部炎群11名(110部位),その他群30名(300部位)だった.靭帯骨棘が左右対称に発現しているのは,膝関節では52.3%(34名),踵骨部では43.1%(28名)だった.靭帯骨棘(E)の発現率は大腿四頭筋腱膝蓋骨付着部(Q)で47.7%,膝蓋腱膝蓋骨付着部(P)で16.2%,膝蓋腱脛骨付着部(T)で20.8%,アキレス腱付着部(A)で55.4,足底腱膜付着部(PL)で43.8%だった.大靭帯骨棘はQEの62.9%,PLEの52.6%を占めた.P,Tにおいては,大靭帯骨棘の発現率は低かった.付着部腱の厚さはPのみ男性が厚く(3.7 mm vs 3.3 mm),Aのみ脊椎関節炎群が他3群より有意に厚くなっていた(5.1mm vs 4.2,4.3,4.2 mm, p<0.01).ロジスティック回帰分析では,年齢がQE,AE,PLEの危険因子だった.踵骨部付着部炎はQE,PE,PLE,関節リウマチはPE,PLE,脊椎関節炎はPLEの危険因子であった.踵骨部付着部炎のみ大靭帯骨棘の危険因子だった.
【考察】
大靭帯骨棘は脊椎関節炎(慢性)に特徴的と言われているがr),本調査において,大靭帯骨棘の危険因子は年齢と踵骨部付着部炎であった.脊椎関節炎は腱付着部炎が本態とされているがr),大靭帯骨棘の発現は,腱付着部炎を反映したものと考えられる.脊椎関節炎の危険因子の検討を単回帰分析結果で有意であったアキレス腱の厚さ,膝蓋腱近位・遠位の厚さ,足底靭帯骨棘ありで,ロジスティック回帰分析を行うとアキレス腱の厚さのみが危険因子だった.
【結語】
踵骨部大靭帯骨棘は加齢性変化であり,腱付着部炎の病態も反映していると考えられた.アキレス腱付着部では,その厚さが,足底部では靭帯骨棘が脊椎関節炎の診断に有用な可能性がある.