Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
運動器 運動器①

(S748)

小児Monteggia骨折の超音波画像

Ultrasound imaging of Monteggia fracture in children

金谷 裕司

Yuji KANAYA

自治医科大学付属病院整形外科

Department of Orthopaedics, Jichi Medical University Hospital

キーワード :

【はじめに】
小児Monteggia骨折は初診時に正確なレントゲン検査が行われずに,橈骨頭の脱臼が見逃される事が少なくない.そのため,将来的に可動域制限を伴う変形性肘関節症などを合併して,ADL低下の原因となり得る.しかし,初診時に本骨折を見落とさずにすぐに診断が可能であれば,早期に整復を行うことで,ほとんどの症例が合併症・後遺症を残さずに治療が可能である.今回,2度の外来診療で見逃された小児Monteggia骨折を超音波検査で,診断できた1例を経験したので報告する.
【症例】
2歳の男児.海外旅行中にベットから転落受傷.右肘痛を訴えて,現地の医師の診察を受けたが,骨折はないと診断された.帰国後に近医整形外科受診してレントゲン検査を行ったところ,やはり問題ないと言われ経過観察していたが,受傷5か月頃から肘の大きさに左右差があることを母親が気付き,別医を受診したところ肘の軟部腫瘍が疑われ,当院紹介受診となった.超音波検査を含む精査を行ったところ,軟部腫瘍でなく,Monteggia骨折に伴う橈骨頭の脱臼の診断となった.診断後は外科的治療が行われ,手術後1年の時点で,肘関節の可動域制限なく,経過良好である.
【考察】
小児Monteggia骨折の診断は難しく,見逃しの報告は多い.この理由としては,尺骨の塑性弯曲骨折と不全骨折の場合が少なくなく,明らかな骨折が分かりにくい事.また,小児に対して正確なレントゲン検査を行うことが困難なことなどがあげられる.この点,超音波検査は無侵襲で,何度でも検査を行う事ができ,肘の観察により橈骨頭の脱臼は容易に診断できる.過去に超音波検査で診断を行った報告はないが,有用な検査であると考えられる.小児の肘外傷を診察する場合は,Monteggia骨折の可能性を疑い超音波検査を行うべきと考える.
【結語】
2度の診察で見逃された小児Monteggia骨折に対して,超音波検査を行うことで,容易に橈骨頭の脱臼を確認できた1例を経験した.