Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
運動器 運動器①

(S746)

超音波を用いた非アルコール性脂肪性肝疾患における骨格筋異常の解析

Assessment of skeletal muscle abnormality in non-alcoholic fatty liver disease by ultrasonography

志田 隆史1, 丸山 剛1, 呉 世昶2, 秋山 健太郎1, 澤井 朱美1, 福元 喜啓3, 磯辺 智範2, 平野 雄二4, 岡本 嘉一2, 正田 純一2

Takashi SHIDA1, Tsuyoshi MARUYAMA1, Sechang OH2, Kentaro AKIYAMA1, Akemi SAWAI1, Yoshihiro FUKUMOTO3, Tomonori ISOBE2, Yuji HIRANO4, Yoshikazu OKAMOTO2, Junichi SHODA2

1筑波大学大学院人間総合科学研究科, 2筑波大学医学医療系, 3神戸学院大学総合リハビリテーション学部, 4筑波大学附属病院放射線部

1Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba, 2Faculty of Medicine, University of Tsukuba, 3Faculty of Rehabilitation, Kobe Gakuin University, 4Department of Radiology, University of Tsukuba Hospital

キーワード :

【背景】
近年,非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)が増加している.NAFLDにおける骨格筋の異常はインスリン抵抗性の誘導など,肝病変の進展に重要な役割を演じる.このような観点から,NAFLDにおける骨格筋の質的および量的な評価は重要である.従来,骨格筋評価にはCTやMRIの機器が使用されてきたが,放射線被曝や検査時間等の問題があるため,医療現場において容易に実施することは困難な場合も多い.そこで我々は,骨格筋超音波検査に着目した.本検査法は比較的安価であり,非侵襲的であることが利点である.また,超音波画像で計測される筋厚はCTやMRIとも高い相関があると報告されている.そこで,本研究では,超音波を用いた骨格筋の輝度と弾性度(質的),筋厚(量的)について測定し,NAFLDの骨格筋異常について解析した.さらに,骨格筋異常とNAFLD病態関連因子との関連性についても検討した.
【対象・方法】
対象は肝臓生活習慣病外来に通院するNAFLD患者(N)91例(M/F 39/52)と,非NAFLD患者(NN)35名(M/F 11/24)および健常人(H)24名(M/F 17/7)とした.測定機器は,S2000(Siemens)を使用した.筋輝度はB(brightness)モードで得られた画像をoff-lineで解析して求めた.骨格筋超音波による筋輝度,筋弾性度,筋厚(大腿直筋+中間広筋),ミュータスF-1による膝関節伸展筋力(以下,筋力),FibroScan 502(Echosens)による肝弾性度と肝脂肪量,MRSによる骨格筋細胞内脂肪(IMCL)および骨格筋細胞外脂肪(EMCL),体組成値(InBody 720,InBody S10),骨格筋指数(SMI;四肢骨格筋量/身長2),血液生化学検査値を測定した.統計解析では,超音波測定項目(輝度,弾性度,筋厚),筋力の3群比較は年齢と体重による補正を行った.その他は実測値を用いた.
【結果】
SMI:SMIは,H 7.29±1.04,NN 6.30±0.95,N 7.28±1.11であった.NAFLD患者では非NAFLD群に比してSMIが有意に高値であった(P<0.01).骨格筋超音波:筋輝度は,H 60.9±12.9(mean±SD), NN 79.1±18.0,N 83.1±18.4であった.健常者および非NAFLD群に比してNAFLD患者では筋輝度が有意に高値であった(P<0.01).筋厚は,H 34.4±16.9,NN 30.7±5.6,N 37.3±8.7,筋弾性度は,H 1.70±0.56,NN 1.65±0.44,N 1.75±0.56であり有意差は認められなかった.筋力:H 98.8±15.7,NN 107.9±22.4,N 83.3±23.7であった.NAFLD患者では非NAFLD群に比して筋力が有意に低下していた(P<0.01).MRS:健常者とNAFLD患者における骨格筋MRSは,IMCL H 3.6±0.9 vs. N 5.2±2.4,EMCL H 5.2±4.2 vs. N 17.9±15.4であり,NAFLD患者では健常者に比してIMCLおよびEMCLが有意に高値であった(P<0.01).考察:筋輝度,SMI,筋力とMRS測定値の関連性を検討したところ,筋輝度はEMCLと有意な正の相関を示した(r = 0.566,P<0.01).また,筋輝度はSMIと筋力と有意な負の相関を示した(r =-0.537,P<0.01).筋輝度に影響するNAFLD病態関連因子を検討したところ,単変量解析では,年齢,体重,内臓脂肪面積,体脂肪率,SMI,筋厚,筋力,HbA1cが有意な因子であった.重回帰分析(Stepwise)では,内臓脂肪面積とSMIが独立した因子であった(P<0.01).
【結語】
NAFLD患者の骨格筋では,肥満に随伴する骨格筋の脂肪化,これに関連した炎症・酸化ストレスなどによる筋組織の減少と筋力の低下が生じていると推察された.NAFLD患者における骨格筋超音波検査の実施は,骨格筋の異常(脂肪化,筋萎縮)の評価に有用であると考えられた.