Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
血管 血管①

(S729)

人工関節置換術後の新規深部静脈血栓症の発生予測に有用なひらめ静脈径の検討

Cut-off value of soleal vein diameter for prediction of deep vein thrombosis after total hip or total knee arthroplasty

阿部 記代士1, 湯田 聡2, 3, 安井 謙司1, 小林 千紘1, 橋本 暁佳4, 寺本 篤史5, 名越 智6, 山下 敏彦5, 髙橋 聡2, 三浦 哲嗣3

Kiyoshi ABE1, Satoshi YUDA2, 3, Kenji YASUI1, Chihiro KOBAYASHI1, Akiyoshi HASHIMOTO4, Atsushi TERAMOTO5, Satoshi NAGOYA6, Toshihiko YAMASHITA5, Satoshi TAKAHASHI2, Tetsuji MIURA3

1札幌医科大学附属病院検査部, 2札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座, 3札幌医科大学医学部循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座, 4札幌医科大学医学部病院管理学, 5札幌医科大学医学部整形外科学講座, 6札幌医科大学医学部生体工学運動器治療開発講座

1Division of Laboratory Diagnosis, Sapporo Medical University Hospital, 2Department of Infection Control and Laboratory Medicine, Sapporo Medical University School of Medicine, 3Department of Cardiovascular, Renal and Metabolic Medicine, Sapporo Medical University School of Medicine, 4Division of Health Care Administration and Management, Sapporo Medical University School of Medicine, 5Department of Orthopedic Surgery, Sapporo Medical University School of Medicine, 6Department of Musculoskeletal Biomechanics and Surgical Development, Sapporo Medical University School of Medicine

キーワード :

【背景】
人工関節置換術後の新規の深部静脈血栓症(DVT)発生因子として,高齢,女性,人工膝関節置換術(TKA)に加え,定性的に評価したひらめ静脈の拡大(10 mm以上)が報告されている.しかし,新規DVT発生予測に最も有用なひらめ静脈径の値は不明である.
【目的】
人工関節置換術後の新規DVT発生予測に有用なひらめ静脈径を検討すること.
【対象および方法】
2014年9月から2015年11月までの間に人工関節置換術前および術後に下肢静脈エコー検査を施行した連続108例(平均年齢67±13歳,人工股関節置換術(THA)81例,TKA27例)を対象とした.術前(平均5日)と術後(平均9日)に,東芝社製Aplio500もしくはGE社製LOGIQ S8の8-10MHzの高周波リニア型プローブを用いて下肢静脈エコー検査を行い,DVTの有無を評価した.ひらめ静脈の観察は,ベッド横に下腿を下垂させて行い,左右ひらめ静脈の最大短軸径を計測した.術後は,間欠的空気圧迫法に加え,THA例では新規抗凝固薬,TKA例では低分子ヘパリンを投与した.なお,術前の検査でDVTを認めた例は検討から除外した.
【結果】
32例(30%)に新規DVTの発生を認めた(DVT群).DVT群は,非DVT群(76例)に比べ,ひらめ静脈径(8.7±2.7 vs. 7.2±2.0 mm,p<0.01)は有意に大であったが,年齢(69±11 vs. 67±14歳,p=0.47)や女性の頻度(91%vs. 74%,p=0.051),血圧,内服薬,基礎疾患,Dダイマー値,人工関節置換術の既往の有無,手術時間や術後リハビリ開始までの期間は,2群間で差を認めなかった.年齢,性別とひらめ静脈径を説明因子とした多変量解析では,ひらめ静脈径(odds ratio [OR]1.3,95%CI 1.1-1.6,p=0.004)が新規DVT発生を予測する独立規定因子として選択された.ROC曲線から求めたひらめ静脈径の閾値(8.5mm以上)を用いると,感度56%,特異度79%で,術後の新規DVT発生を予測可能であった.
THA後21例(26%),TKA後11例(41%)に新規DVTを認めた.DVT群のひらめ静脈径は,THA群(8.4±2.4 vs. 7.3±2.0 mm,p<0.05),TKA群(9.2±3.1 vs. 6.9±1.8 mm,p<0.05)のいずれも,非DVT群に比べ有意に大であったが,他の指標は2群間で差を認めなかった.THA群において,ROC曲線から求めた閾値(ひらめ静脈径8.5 mm以上)を用いると,感度52%,特異度80%で,術後の新規DVT発生を予測可能であった.
【考察】
本検討により,人工関節置換術後の新規DVT発生予測に有用なひらめ静脈径を,初めて決定することができた.本邦において,ひらめ静脈径の正常値は6.7±1.8 mmと報告されており,今回の閾値(8.5 mm)は,正常上限を超える値であった.
【結論】
人工関節置換術後の新規DVT発生予測に有用なひらめ静脈径は,従来用いていた値(10 mm以上)より低値であった.