Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
産婦人科 スクリーニング

(S722)

当院における胎児超音波スクリーニングの現状について

Ultrasound screening test and prenatal diagnosis of fetal anomalies in our hospital

前川 亮, 品川 征大, 松浦 真砂美

Ryo MAEKAWA, Masahiro SHINAGAWA, Masami MATSUURA

山口大学医学部付属病院総合周産期母子医療センター

Perinatal Center, Yamaguchi University Hospital

キーワード :

【緒言】
近年の周産期医療において,超音波検査による出生前診断の重要性は極めて高くなっている.当科でも胎児の評価項目を統一して,妊娠20週,30週,36週に超音波検査による胎児スクリーニングを施行している.今回,当科で実施している胎児超音波スクリーニングの有効性を検討するため,胎児・新生児形態異常の出生前診断率を検討した.
【方法】
平成22年4月1日から平成27年9月30日までに当院で胎児超音波スクリーニングを施行し,22週以降に分娩となった2908例を対象とした.胎児超音波スクリーニングで出生前に胎児異常を指摘された症例,出生後に胎児形態異常を診断された症例を抽出し,各部位別の疾患の出生前診断率を調べた.
【結果】
当院の胎児形態異常の有病率は3.5%(2908例中103例),異常件数は120件であった.全体の出生前診断率は81.7%(120件中98件)であった.疾患群別の出生前診断率は,中枢神経系疾患は小脳低形成5件,水頭症3件,髄膜瘤3件,脳室拡大1件,脳梁欠損1件が出生前診断され,診断率は100%(13件中13件)であった.呼吸器系疾患は横隔膜ヘルニア11件全件,肺分画症1件が出生前診断されていたが気管狭窄1件が出生後に診断され,出生前診断率は92%(13件中12件)であった.循環器系疾患は両大血管右室起始症5件,Ebstein奇形5件,ファロー四徴症5件中4件,房室中隔欠損症等3件中2件,大動脈弓離断症2件,大動脈縮窄症1件,左心低形成症候群1件,完全大血管転移1件が出生前診断されていた.一方,ファロー四徴症1件,総肺静脈還流異常症1件,房室中隔欠損症1件,また単独発症の心室中隔欠損症5件が出生後に診断され,出生前診断率は76%(41件中31件)であった.消化器系疾患は上部消化管閉鎖・狭窄の8件中7件,腹壁破裂1件,臍帯ヘルニア1件が出生前診断され,診断率は90%(10件中9件)であった.泌尿器生殖器系疾患は多嚢胞性異型性腎4件,卵巣嚢腫1件,尿膜管嚢胞1件などが出生前診断されていた.一方,尿道下裂4件,陰茎奇形1件が出生後に診断され,診断率は75%(20件中15件)であった.外表奇形は口唇裂・口唇口蓋裂15件中12件などが出生前診断されていたが,口唇裂・口蓋裂3件,四肢欠損1件,多指症1件などは出生後に診断され,診断率は74%(19件中14件)であった.その他(多脾症候群1件,頸部リンパ管腫1件など)の疾患については出生前診断率は100%(4件中4件)であった.分娩方法及び分娩後に迅速な処置が必要となる可能性がある疾患について検討したところ,心疾患以外(横隔膜ヘルニアなど)での診断率は100%(19件中19件)であり,全件が出生前診断されていた.一方,心疾患(動脈管依存性疾患等)について検討したところ,総肺静脈還流異常症を除いて出生前診断されており,診断率は92%(12件中11件)であった.
【考察】
当院の出生前診断率はこれまでに報告された他施設と同等の成績であり,当院の胎児超音波スクリーニング法は有効であった.しかし,循環器系疾患,泌尿器生殖器系疾患,外表奇形の出生前診断率は他の部位と比較して低く,スクリーニング項目の追加・改変と超音波施行者の技術向上が不可欠であると考えられた.