Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
産婦人科 腫瘍

(S708)

子宮頚部前癌病変における光音響技術の有用性の検討

Clinical trial of photoacoustic imaging for uterine cervical lesions

精 きぐな1, 石原 美弥2, 笹 秀典1, 大川 晋平2, 中村 亜希子2, 平沢 壮2, 入澤 覚3, 和田 隆亜3, 古谷 健一1

Kiguna SEI1, Miya ISHIHARA2, Hidenori SASA1, Shinpei OKAWA2, Akiko NAKAMURA2, Takeshi HIRASAWA2, Kaku IRISAWA3, Takatsugu WADA3, Kenichi FURUYA1

1防衛医科大学校産科婦人科講座, 2防衛医科大学校医用工学講座, 3富士フイルム株式会社メディカルシステム開発センター

1Department of Obstetrics and Gynecology, National Defense Medical College, 2Department of Medical Engineering, National Defense Medical College, 3Medical Systems Research and Development Center, FUJIFILM Corporation

キーワード :

【背景】
子宮頚癌はヒトパピローマウィルス(HPV)の感染が主因となる悪性新生物であり,比較的若年に患者層を有する.早期の場合完治できる可能性のある悪性新生物として,早期発見を目的とする検診の重要性は非常に大きい.子宮頚癌検診では擦過細胞診が汎用され,細胞診で異常を呈した症例についてコルポスコピーを施行するが,特に子宮頚部の比較的深部に発生する腺癌ではコルポスコピーにおいても捉えられない症例もあり,子宮頚癌の診断の中でも他方法による補助診断が期待される分野である.婦人科診療で汎用される経腟超音波画像化装置の利用は子宮頚癌のような微小病変のスクリーニングにおいては意義が低いとされているが,近年,光音響技術による血管描出能力を超音波走査に組み込み,子宮頚癌および前癌病変を検出する試みが始まっている.特定の波長の光を照射すると,対象物は光吸収に伴い熱膨張が生じる.光音響技術はその熱膨張によって発生した超音波をとらえ分析する光学的技術である.計測対象が超音波であるため超音波伝播時間から発生源の位置特定が可能であり,従来の超音波画像に重畳が可能である点が臨床応用において大きな利点である.ヘモグロビンに特異的な波長を選択することで,従来の超音波走査では捕捉困難な微細血管を描出することが可能である.子宮頚癌発生過程においてはHPV感染により顕著な新生血管増生が起こり前癌病変から癌に至る悪性度の上昇につれ増加することが認められ,光音響技術によるvitroでの病変部位同定の報告も挙がっている.今回我々は,子宮頚癌および前癌病変に対し,光音響技術による微細血管描出による病変検出能力の評価を臨床研究において試行したので報告する.
【方法】
防衛医科大学校医用工学講座が富士フイルム株式会社と,厚生労働省科学研究費(医療機器開発推進研究事業)および国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)委託研究開発費にて開発した光音響画像化装置を用いた.本装置は超音波画像化装置に光音響画像化装置を一体化させたものであり,通常診療に用いる経腟・経直腸用スティック型プローブにより超音波と光音響両者の走査が可能である.我々は同装置を経直腸走査に用い,前立腺摘出術における神経血管束の描出能においてその有用性をすでに報告している.本研究では,2015年12月から2016年4月までに防衛医科大学校病院婦人科外来を受診したコルポスコピー受検者で文書での同意が取れた受検者を対象とした.この光音響画像化システムによる微小血管像と病理組織診断結果を照合し,子宮頚癌検診における光音響技術の有用性を検討した.また,コルポスコピー後に円錐切除術を行った患者については光音響画像と円錐切除術検体病理組織診断結果を比較し,有用性を検討した.
【結果】
子宮頚部擦過細胞診において扁平上皮内病変が疑われた患者で,コルポスコピーを受検した者を対象に子宮頚部および腟部の光音響技術による走査を実施した.子宮頚部の微細な血管は通常の超音波走査では検出不能であったが,光音響技術により描出できることが確認できた.光音響技術は微細な新生血管が増生する病変部位の特定に関し,臨床においても有用である可能性が示された.
【結論】
光音響画像化装置を経腟走査に用い,子宮頚部の走査を行った.患部に近接した位置で走査が可能な子宮頚部で新生血管の増生が見られる前癌病変は適切な対象であると考えられた.光音響技術の子宮頚癌検診における有用性を追求するにあたっては,各病期の症例を十分数集積し病理組織学診断結果と照合を行うことが不可欠と考えられる.