Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
産婦人科 胎児心臓循環

(S702)

胎児診断した先天性心疾患症例への対応と課題

Correspondence and problems to the fetal diagnosed congenital heart disease

永井 立平

Ryuhei NAGAI

高知医療センター産科

Obstetrics, Kochi Health Sciences Center

キーワード :

【目的】
重症先天性心疾患の外科治療が可能な施設は本県には無く,治療には県外施設への搬送が必要となる.搬送時期や搬送先施設の選択に苦慮することが多く,出生後の経過の予測を含めた適切な胎児診断が求められる.過去5年間に当院で経験した先天性心疾患胎児診断症例を抽出し問題点を明らかにすることを目的とした.
【方法・対象】
2010年1月1日から2015年8月31日までに当院で胎児診断した心疾患症例について診療録から後方視的に検討した.
【結果】
対象症例は39例で,その内訳は新生児期に外科治療を要する症例が9例,内科的管理が可能な症例が23例,完全房室ブロック1例を含む胎児不整脈が7例だった.染色体異常を合併した症例は,21トリソミー4例,18トリソミー5例,13トリソミー1例,出生後にCornelia de lange症候群と判明した症例が1例だった.
母体搬送は11例で分娩まで当院で管理したのは22例だった.母体搬送前に予期せぬ分娩となった1例は日齢1に新生児搬送した.母体搬送症例の妊婦の移動手段は自家用車,公共交通機関,緊急時には救急車やヘリコプター搬送と多岐にわたるが,いずれも問題なく搬送先施設へ移動し症例に応じた治療が行なわれた.重症Ebstein奇形の1例は当院での救命は不可能と判断し母体搬送を提案したが希望されず,児は心不全治療に反応せず出生後数時間で死亡した.胎児不整脈症例では完全房室ブロックの1例は母体搬送し日齢2にペースメーカー埋込術を施行し良好に経過している.その他の症例は自施設で分娩管理を行なったが,胎児腹水・肺低形成のため呼吸不全で死亡した1例以外は良好な経過だった.
【考察】
母体搬送時期は搬送先施設との相談で症例毎に決定するが,予定帝王切開症例は予定手術日1週間前頃,経膣分娩症例は妊娠36週頃に母体搬送としている.予期せぬ破水や予定日前の陣痛発来など緊急時にはヘリコプター搬送となる場合があるが,動脈管依存性心疾患など出生直後に手術やカテーテル検査など外科的処置を要する疾患では緊急事態発生後に搬送先を探すことは不可能であり早期からの診断,搬送先の決定と搬送先施設へとの連携強化が必要と考えられた.また現状では13・18トリソミーなど重篤な染色体異常症例は原則として自施設での分娩とし積極的治療は家族の強い希望がなければ行なっていないが,医学の進歩にあわせて今後選択肢を広げることも必要かもしれない.