Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝腫瘍:診断①

(S679)

肝腫瘍性病変における腹部超音波検診判定マニュアルカテゴリー判定の検討

Category judgments of ultrasonic survey in liver tumors

大熊 ちひろ1, 玉野 正也2, 須藤 梨音2, 行徳 芳則2, 稲垣 正樹1, 富田 順子1, 一戸 利恵1, 瀧沢 義教1, 春木 宏介1

Chihiro OKUMA1, Masaya TAMANO2, Rion SUDO2, Yoshinori GYOTOKU2, Masaki INAGAKI1, Junko TOMITA1, Rie ICHINOHE1, Yoshinori TAKIZAWA1, Kosuke HARUKI1

1獨協医科大学越谷病院臨床検査部, 2獨協医科大学越谷病院消化器内科

1Department of Clinical Laboratory, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital, 2Department of Gastroenterology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【はじめに】
腹部超音波検査は,非侵襲的かつ簡便な検査である.一方,その診断能が検査機器や検査施行者の技術レベルに依存するため客観性が低いことが問題であった.この点を改善し,腹部超音波検査の質的向上と均質化および,がんに対する判定基準の共通化を目的として,2014年4月に日本消化器がん検診学会超音波検診委員会が中心となり腹部超音波検診判定マニュアルが発行された.今回われわれは,本マニュアルにおける肝腫瘍性病変の判定基準カテゴリーの妥当性を検討することを目的として本研究を行った.
【対象および方法】
対象は2014年1月から12月までの1年間に腹部超音波にて肝腫瘍性病変を認め,臨床的に最終診断が得られた98例(平均年齢68.2±12.2歳)とした.腹部超音波検査は,超音波検査士3名を含む6名の臨床検査技師(検査技師)と超音波指導医1名を含む消化器内科医師3名が行った.最終診断は造影CT検査,MRI検査等の画像診断,または手術による病理診断等を総合して消化器内科医師により確定された.腹部超音波検診判定マニュアルによるカテゴリー判定(1〜5)は,最終診断を知らされていない検査技師6名が行い,得られた最終診断とカテゴリー判定を比較検討した.
【結果】
医師による最終診断の結果は肝血管腫が21例(21.4%),再生結節が4例(4.1%),限局性結節性過形成が2例(2.0%),肝内胆管癌が2例(2.0%),転移性肝癌が26例(26.5%),肝細胞癌が43例(43.9%)であった.臨床検査技師によるカテゴリー判定の結果は2が10例(10.2%),3が3例(3.1%),4が51例(52.0%),5が34例(34.7%)であった.カテゴリー2と3の最終診断は13例全てが肝血管腫であった.カテゴリー4の内訳は肝血管腫が6例,限局性結節性過形成が2例,再生結節が4例,肝細胞癌が21例,転移性肝癌が16例,肝内胆管癌が2例,カテゴリー5の内訳は肝血管腫が2例,肝細胞癌が22例,転移性肝癌が10例であった.カテゴリー2と3の合計13例では,最終的な臨床診断における悪性腫瘍は認められなかった.一方で,カテゴリー4と5の合計85例中71例(83.5%)が悪性腫瘍であった.
【考察】
今回の検討ではカテゴリー4が最も多く過半数を占めており,通常の検診とは母集団が異なると思われる.原因として当院は慢性肝障害の経過観察例が多くびまん性病変の合併を認める場合が多いこと,また,肝腫瘍性病変の精査目的で他院からの紹介が多いためであると考えられた.肝血管腫は21例中カテゴリー2と判定されものは10例であり3と判定されたものは3例,その他8例はカテゴリー4または5と判定された.血管腫はその血流量によって様々な所見を示すため判定が困難であると思われた.限局性結節性過形成は大きさによりカテゴリー4と判定され,再生結節は多発によりカテゴリー4と判定された.
【結論】
肝腫瘍性病変における腹部超音波検診判定マニュアルによるカテゴリー判定は悪性腫瘍の拾い上げに有用であると考える.カテゴリー判定4以上を確実に拾い上げて精査することが重要であると思われた.しかしながらカテゴリーはわかりやすい一方,判定に長時間を要することが今後の課題であると思われた.