Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 診断:一般②

(S676)

CO2を使用した上部消化管内視鏡検査前後の腹部超音波検査描出能の検討

The abdominal ultrasonography depiction ability before and after the esophagogastric duodenal endoscopy using CO2

髙橋 肇1, 中河原 浩史2, 山口 紗也華1, 遠藤 有紀1, 助川 久美子1, 山村 彰彦1, 小川 眞広2, 入口 陽介3

Hajime TAKAHASHI1, Hiroshi NAKAGAWARA2, Sayaka YAMAGUCHI1, Yuki ENDO1, Kumiko SUKEGAWA1, Akihiko YAMAMURA1, Masahiro OGAWA2, Yosuke IRIGUCHI3

1東京都がん検診センター検査科, 2日本大学病院消化器内科, 3東京都がん検診センター消化器内科

1Clinical Laboratory Department, Tokyo Metropolitan Cancer Detection Center, 2Gastroenterology, Nihon University Hospital, 3Gastroenterology, Tokyo Metropolitan Cancer Detection Center

キーワード :

【目的】
腹部超音波検査の前に上部消化管内視鏡検査を行うと,空気の消化管内貯留により腹部超音波描出能を低下させてしまうことは周知の事実である.しかし,検査効率面から考えると全例が上部消化管内視鏡検査の前に腹部超音波検査をすることは望ましくない.近年,CO2が空気より生体内での吸収が早いことを利用して,腹部膨満感の軽減や迷走神経反射を抑制するためにCO2送気による上部消化管内視鏡検査を施行している施設が増えている.これにより,上部消化管内視鏡検査の前に腹部超音波検査を行う検査順番に,必ずしもこだわる必要がないとの報告がみられるようになってきた.しかし,上部消化管内視鏡検査後から腹部超音波検査までの待ち時間や,内視鏡検査前後の同一人物による腹部超音波描出能の検討はほとんど行われていない.そこで今回我々は,同一人物においてCO2送気による上部消化管内視鏡検査前後に腹部超音波検査を施行し,超音波描出能を経時的に検討したので報告する.
【対象】
当センターにおいて,CO2送気による上部消化管内視鏡検査後に腹部超音波検査を施行した12症例とした.本研究は当センターの倫理委員会の承認後,文書により承諾を得た症例とした.
【方法】
同一人物でCO2送気による上部消化管内視鏡検査の前,直後,30分後,60分後に腹部超音波検査を行い,膵臓,肝外胆管,右腎臓を1方向にsweep scanし動画保存した.膵臓は仰臥位,肝外胆管は左下側臥位,右腎臓は仰臥位で施行した.評価は上部消化管内視鏡検査前を対象として,直後,30分後,60分後の描出状況を,日本超音波医学会認定超音波専門医が,保存した動画をブラインドで読影し行った.
【結果】
膵臓は上部消化管内視鏡検査直後で描出能が低下し,30分後と60分後では内視鏡検査前とほぼ同等の描出能であった.肝外胆管および右腎臓は直後,30分後,60分後のいずれも,描出能の低下はみられなかった.上部消化管内視鏡検査後では,内視鏡前と比較し超音波描出能が良好となった症例もみられた.
【考察】
上部消化管内視鏡検査直後で膵臓の描出能が低下したのは,胃内CO2の残存と,消化管の蠕動運動の亢進によるものと考えられた.肝外胆管は左下側臥位やプローブの圧迫で,右腎臓は背側から描出したことで描出能に影響を及ぼさなかったと考えられた.上部消化管内視鏡検査後に超音波描出能が良好となる症例は,内視鏡検査終了時の胃の内容物やガスの吸引による改善と考えられた.
【結語】
CO2送気による上部消化管内視鏡検査後,30分以上間隔をあければ,腹部超音波描出能に影響は及ぼさないと考えられた.