Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
消化器 肝腫瘍:治療②

(S661)

ミリプラチン水和物を用いた肝細胞癌カテーテル治療に対する超音波検査の有用性

Usefulness of the ultrasonography in the transarterial therapy using Miriplatin to hepatocellular carcinoma

渡邊 幸信, 小川 眞広, 林田 まり子, 大城 周, 南川 里抄, 廣井 喜一, 古田 武慈, 山本 敏樹, 杉山 尚子, 森山 光彦

Yukinobu WATANABE, Masahiro OGAWA, Mariko HAYASHIDA, Syu OSHIRO, Risa MINAMIKAWA, Yoshikazu HIROI, Takeshige FURUTA, Toshiki YAMAMOTO, Naoko SUGIYAMA, Mitsuhiko MORIYAMA

日本大学病院消化器内科

Gastroenterology, Nihon University Hospital

キーワード :

【目的】
肝癌に対する集学的治療法として肝動脈塞栓療法が挙げられる.これまで我々は肝癌に対するカテーテル治療における超音波検査の有用についてこれまで当会で報告をしている.カテーテル治療に用いられる使用薬剤は様々であり,さらに抗がん剤とリピオドールのEmulsionの方法などは施設により様々であり,手法が統一されていないのが現状である.この様な背景の中,我々はリピオドールとEmulsionをしないで用いるミリプラチン水和物に注目し,この薬剤を用いた肝癌治療における超音波検査の有用性を検討したので報告する.
【対象】
当院で切除・局所療法の適応でないと判断され,ミリプラチン水和物を用いて肝動脈カテーテル療法が施行された146結節のうち,術中に超音波検査を施行し,観察しえた35結節である.尚,ミリプラチン水和物を用いた肝動脈塞栓療法は同院の倫理委員会の承諾の上患者の同意が得られた症例に対し施行している.
【方法】
以下の方法で治療前後および薬剤の投与中に超音波検査で腫瘍部の観察を行いその有用性について検討をおこなった.①超音波ファントムによりカテーテルからミリプラ水和物を注入しファントム上での挙動について観察を行う.②治療前にsonazoid®0.5ml/bodyを用いた造影超音波検査をB-mode像と共に治療中および治療効果判定の対象画像を作成する.③カテーテルからミリプラ水和物が投与される際,随時超音波検査で腫瘍部を観察し対象画像との差異を検討した.④治療終了翌日に②と同条件で造影超音波検査による治療効果判定を行い1ヶ月後の造影CTの評価との比較をおこなった.使用装置:GEヘルスケア社製LOGIQ E9,S6使用探触子C1-6,C1-5,9L,
【結果】
①カテーテルから流出したミリプラ水和物はファントム上では粒状の高エコーとして描出され,コメット様エコーやアコースティックシャドウなどの所見は認めなかった.②今回対象となった結節においては全例腫瘍濃染像を認めた.腫瘍周囲から中へと向かう腫瘍血管と共に明確な腫瘍濃染が確認された.③通常のB-modeの観察で術前のイメージと同様に腫瘍の周囲から中心部に向かって流入する薬剤が観察可能であった.腫瘍の蓄積と共に次第に内部の高エコー化は強くなり,アコースティックシャドウが出現する症例も認めた.特にこの様な症例では約73%が治療1ヶ月後の造影CTによる治療効果判定でTE4の評価であった.また腫瘍外の動脈への流出,肝実質への過剰投与などの観察も可能であった.④治療翌日の造影超音波検査においても腫瘍内の高エコー化の強い症例ほど腫瘍内血流が減弱している傾向を認めた.
【考察】
ミリプラ水和物とリピオドールの混合液は,ミリプラ水和物の平均粒子径は約10μmであることを考えると粒子1粒ずつが観察されるわけではなく,複数の粒子が集合体として油滴を形成していることが予想された.特に親油性が良いために治療前にEmulsionを施行しない点が他の薬剤と異なり空気の混入が避けられることが超音波で視認しやすい要因と考えられた.ミリプラ水和物とリピオドールの混合液が超音波B-modeの音源になることが確認され,治療monitoringとして有用な手法になることが予測された.
【結論】
ミリプラチン水和物を用いて肝動脈カテーテル療法において超音波検査は有用な手法であると考えられた.